柔らかく、けれど一切の隙のない足取りでこちらへ近づいてくる彼に、私の呼吸が一瞬だけ浅くなる。
(……来た)
彼の瞳は静かに私達を見つめたが、私の正体に気づいた様子は無い。
すれ違ったときの一瞥と、今の視線はまるで違っていた。ただ、王家の親類としてそこに立つ少女を見ているだけ。
「……こちらにいたか。シムラクルム、改めて哀悼の意を表する。フォルトゥナは……我が民にとっても、もちろん私にとっても大切な存在だった」
「……聖下、深く感謝いたします」
叔父様が丁寧に頭を下げる。それに合わせて私も小さく会釈をした。
(大切な存在……?お母様と婚約していた時期と同時期に他の女性と子供を作っておいて……どの口が……)
聖下の紫の瞳が再び私へと向けられる。
「……こちらの方は?」
それはただの確認に過ぎない問いだった。まさか、目の前の少女が自分の娘だなどと、夢にも思っていない顔。
(――なら、私は)
私は一呼吸おいて、微笑を浮かべた。内心の揺らぎを誰にも気づかせないように。
「ラエティティアと申します……」
その瞬間、胸の奥が少しだけ軋んだ。
「テネブラエ王家の親戚にあたる者です。葬儀の手伝いに参りました」
そう名乗った自分の声は、驚くほど穏やかだった。
(……来た)
彼の瞳は静かに私達を見つめたが、私の正体に気づいた様子は無い。
すれ違ったときの一瞥と、今の視線はまるで違っていた。ただ、王家の親類としてそこに立つ少女を見ているだけ。
「……こちらにいたか。シムラクルム、改めて哀悼の意を表する。フォルトゥナは……我が民にとっても、もちろん私にとっても大切な存在だった」
「……聖下、深く感謝いたします」
叔父様が丁寧に頭を下げる。それに合わせて私も小さく会釈をした。
(大切な存在……?お母様と婚約していた時期と同時期に他の女性と子供を作っておいて……どの口が……)
聖下の紫の瞳が再び私へと向けられる。
「……こちらの方は?」
それはただの確認に過ぎない問いだった。まさか、目の前の少女が自分の娘だなどと、夢にも思っていない顔。
(――なら、私は)
私は一呼吸おいて、微笑を浮かべた。内心の揺らぎを誰にも気づかせないように。
「ラエティティアと申します……」
その瞬間、胸の奥が少しだけ軋んだ。
「テネブラエ王家の親戚にあたる者です。葬儀の手伝いに参りました」
そう名乗った自分の声は、驚くほど穏やかだった。

