主人公の座、返してもらいます!〜私が本物の主人公だったらしいので華麗に人生を取り返してみせようと思います〜

ディアに連れられて食堂に入ると、叔父様とルディ様、そして見知らぬ少年が席に着いていた。

叔父様と同じ深い紫の髪に、燃えるような深紅の瞳――
彼がこの国の王太子、グラディウスなのだろう。

「あ、あの。僕はグラディウスです。よろしくね、ティア姉さん」

堂々たる威厳を纏う叔父様や、明るく朗らかなディアとは対照的に、どこか控えめで内気な王太子殿下に思わず目を見張る。

たしか、彼は私たちより二つ年下だったはず。だから“姉さん”と呼んだのだろう。

「こちらこそ、よろしくお願いいたします。王太子殿下」
「もうラティ、そんなに堅くならなくていいのよ! “グラド”でいいの、グラドで!」
「うん。僕もその方が嬉しい。言葉遣いも、もっとフランクに……」
「じゃあ、グラド。改めて、よろしくね」
「うん!」

ふわりと花が咲くように微笑んだグラドは、その髪と瞳の色もあってか――どこかお母様に似ている気がした。

「挨拶もできた事だし早速食事にしよう」

回帰の前も後も、私はちゃんとしたテーブルマナーを学んだことがなかった。

だから今、完璧な所作で食事をする叔父様たちと並ぶだけで、どこか肩身が狭く感じてしまう。

そんな私を見て気を遣ったのか、ディアがぱっと声を上げた。