「ここがお母様の部屋……」
窓からバルコニーに出て下を見てみれば、美しく手入れが施されている庭園が目に入った。
「お母様……見えていますか? ここには、お母様の好きなものがたくさんあるんですよ」
庭園に向いていた視線をバルコニーの手すりを掴んでいた手に移すと、震えている手が目に入り反対の手で握りしめる。
未来は変わった。
アドラティオにいた頃よりも、ずっと幸せなはずなのに――胸の奥がぽっかりと空いたように、何かが足りない。
お母様の好きなもので満ちた部屋を見ても、心はむしろ虚しさでいっぱいになった。
「……私、お母様と一緒に幸せになりたかったのに……」
二度と叶わないその願いが、胸を締めつける。気づけば、頬を伝うぬるい感触。涙だと気づくのに、時間はかからなかった。
「姫様……」
「あ、ごめんねパクシー……それより姫様なんてやめて?私はもう王女でもないんだし……」
「ですが……」
「大丈夫!……あ、着替えの準備をしなきゃよね?お願いしてもいい?」
「……はい!」
パクシーと他の侍女達の手伝いで入浴を済ませ、新しいドレスに着替える。
髪を丁寧に整えられ、これまで袖を通したこともないような美しいドレスを身にまとった私は、鏡に映る自分の姿に思わず目を奪われた。
「……綺麗。こんなふうに髪もドレスも整えてもらうの、初めて……」
「私、フォルトゥナ様がテネブラエにいらっしゃった時からこうしてフォルトゥナ様の髪を整えさせていただいてたんですよ。ラエティティア様の髪はフォルトゥナ様によく似てらっしゃるので……懐かしいです」
窓からバルコニーに出て下を見てみれば、美しく手入れが施されている庭園が目に入った。
「お母様……見えていますか? ここには、お母様の好きなものがたくさんあるんですよ」
庭園に向いていた視線をバルコニーの手すりを掴んでいた手に移すと、震えている手が目に入り反対の手で握りしめる。
未来は変わった。
アドラティオにいた頃よりも、ずっと幸せなはずなのに――胸の奥がぽっかりと空いたように、何かが足りない。
お母様の好きなもので満ちた部屋を見ても、心はむしろ虚しさでいっぱいになった。
「……私、お母様と一緒に幸せになりたかったのに……」
二度と叶わないその願いが、胸を締めつける。気づけば、頬を伝うぬるい感触。涙だと気づくのに、時間はかからなかった。
「姫様……」
「あ、ごめんねパクシー……それより姫様なんてやめて?私はもう王女でもないんだし……」
「ですが……」
「大丈夫!……あ、着替えの準備をしなきゃよね?お願いしてもいい?」
「……はい!」
パクシーと他の侍女達の手伝いで入浴を済ませ、新しいドレスに着替える。
髪を丁寧に整えられ、これまで袖を通したこともないような美しいドレスを身にまとった私は、鏡に映る自分の姿に思わず目を奪われた。
「……綺麗。こんなふうに髪もドレスも整えてもらうの、初めて……」
「私、フォルトゥナ様がテネブラエにいらっしゃった時からこうしてフォルトゥナ様の髪を整えさせていただいてたんですよ。ラエティティア様の髪はフォルトゥナ様によく似てらっしゃるので……懐かしいです」

