主人公の座、返してもらいます!〜私が本物の主人公だったらしいので華麗に人生を取り返してみせようと思います〜

お母様と久しぶりに言葉を交わしてから、何度もテネブラエ王家に連絡を取る計画を立てたが、いずれも失敗に終わった。

タイムリミット――私の誕生日が目前に迫る中、私の心は折れかけていた。

(まさか、お母様の実家に手紙ひとつ送るのが、こんなにも難しいなんて……)

気晴らしに庭へ出ようと部屋を出た瞬間、お母様の部屋の方から騒がしい声が聞こえてきた。

背筋を冷たいものが這い、私は嫌な予感に駆られて駆け出した。

血の匂い――鉄のような生臭さが鼻をつく。

「姫様!こちらへ来てはなりません!」

パクシーの叫びに足を止め辺りを見渡せば、お母様の部屋がアドラティオ王家直属の騎士団に囲まれていた。

「……何があったんですか?」

震える声で問いかけると、騎士たちは無言で道を開けた。

恐る恐る部屋へと足を踏み入れる。

そこには、血の海に倒れるお母様と、その前に立つ国王――イニティウム・ルクス・アドラティオ陛下の姿があった。

陛下は、まるで何の感情も抱いていないかのような目でお母様を見下ろしていた。

その背後には、第一王妃マルティナ殿下が氷のような眼差しで私を見据え、その隣では第一王女アウローラ殿下と第一王子イグニス殿下が、嘲笑を浮かべて立っていた。

「陛下……どうして、こんなことを……? お母様が、一体何を……!」
「この女がテネブラエ王家と連絡を取っていたことが判明した。内容は確認していないが、どうせ謀反でも企んでいたのだろう。これは立派な反逆罪だ」

陛下はそう言い放つと、手にした剣の切っ先を私の喉元へと向けた。