主人公の座、返してもらいます!〜私が本物の主人公だったらしいので華麗に人生を取り返してみせようと思います〜

お母様の座ったソファの正面に座り、改めてお母様の顔を見つめる。

深い紫の髪に、真紅の薔薇を思わせる瞳。まさにテネブラエ王家の血を色濃く受け継いだその姿は、回帰前――病に倒れる前の、元気だった頃の母そのものだった。

だが、私は知っている。

先ほどパクシーに確認したところ、私はあと一ヶ月で八歳になる。つまり、お母様が亡くなるまで残された時間は、たった一ヶ月しかないということだ。

それなのに――目の前の母は、今にも笑い出しそうなほど健康そうに見える。

「それで、テネブラエに連絡したいの?」

「……それは……」

本当のところ、七歳の私よりもお母様の方がよほど現実的な手を打てるだろう。テネブラエ王家に手紙を送るくらい、きっと難しくはない。

でも――

(もし、お母様の行動が“書き換えられた筋書き”から逸れてしまったら……)

侵略者が改変したこの世界では、想定外の行動が命取りになるかもしれない。お母様が巻き込まれるのだけは、どうしても避けたい。

(危険に晒されるのは、私だけでいい)

私は作り笑いを浮かべると、何でもないふりをして首を横に振った。