主人公の座、返してもらいます!〜私が本物の主人公だったらしいので華麗に人生を取り返してみせようと思います〜

回帰前、お母様亡き後も最期まで私に寄り添ってくれた私の第二の母。

「パクシー……!」

パクシーは驚いたように目を見開き、それから優しく微笑んだ。

「あらあら、どうしたんですか? 今日は甘えん坊さんですね。怖い夢でも見ましたか?」

私はしがみつくようにして、その胸元に顔をうずめる。

「ええ、見たの。とっても……怖い夢を」

パクシーの腕の中で、私は幼子のように身を預けながらゆっくりと呼吸を整える。あれは悪い夢。私の努力次第で、きっと無かったことにできる。そう、自分に何度も言い聞かせるように。

(大丈夫、お母様もパクシーもまだ生きている。だから、大丈夫)

私はパクシーに用意してもらった朝食を済ませ、室内で今後の計画を立てる。この国にいては自分はまた侵略者に消されてしまう。だからまず私のすべき事はこの国から脱出することだ。

(この髪と瞳だけでもペルぺトゥスで保護してもらえると思うけど……)

しかし、何の計画も無しにすぐにペルぺトゥスへ行く事は出来ない。

この世界の主人公になる鍵は神聖国ペルぺトゥスだ。つまり、侵略者はそこに居る可能性が高い。

(いつかはきっと侵略者と対峙することになると思うけど、でもそれは今じゃない)

今の私はアドラティオ王国の名ばかりの王女で、後ろ盾も何もない。だから今、私が助けを求めるべき相手はーー

「お母様の実家……テネブラエ王室」