主人公の座、返してもらいます!〜私が本物の主人公だったらしいので華麗に人生を取り返してみせようと思います〜

ハルモニアが姿を消し、静寂が訪れた室内で、私はもう一度、鏡の中の自分と向き合った。

相も変わらず鏡の中には幼い私が映っていて、汚れのない雪のような髪の間から、アメジストを嵌め込んだような瞳が、まっすぐに私を見つめ返していた。

(……この白い髪と、紫の瞳。まるで……宝石みたいに、隠された秘密)

「そうだった、この色……!」

回帰前の人生で私は、お母様とパクシーの前以外では、髪と瞳の色を魔法で隠していた。幼い頃からお母様にそう言われていた為、私自身特に疑問に思っていなかったが、今考えればお母様は私のこの色を隠したかったのだろう。

何故なら白い髪と紫の瞳は、神の血を引く者――神聖国ペルぺトゥス皇族の直系の証だからだ。

(そんな……まさか、お母様の元婚約者って……)

「“主人公”って、そういうこと……。私が、ペルぺトゥスの人間だったなんて……」

ハルモニアは私が幸せになればいいのだと言った。それなら、お母様やパクシーと共にペルぺトゥスに戻り本来の地位を手に入れる事が私の幸せに繋がるだろう。創造主様の書物もきっと、そういう物語だったに違いない。

「あら、姫様おはようございます。今日は随分と早起きですね」

ノックの音と共に私の部屋にやってきたのはお母様の侍女で私の乳母のパクシーだった。