〇大学・仮設ルーム(新セクション)完成披露の日・午前
ゼミメンバーが新テーマ「本音を言える空間」のお披露目準備を進めている。
瑠璃とはるなによる「ありがとうの距離」設計をベースにしたインタラクティブな展示。
咲子「おお~!このライト、心拍で色変わるの!?天才か!」
俊輔「反応速度に遅延がないのがすごい。センサーの質、高いな……」
拓海「“静かでも伝わる”って空間、実際に体験すると、けっこう沁みるね」
祐貴「なんか……ここにいると、自分の“輪郭”を意識する感じ。悪くない」
瑠璃(照れながら)
「ふふ、みんなが自然に“ありがとう”って言える場所、目指してみたの」
はるな「……一度、“言えなかった”からこそ、届くものもあるって信じてるから」
拍手と笑顔が自然に広がる。
〇教室の隅・智貴が1人でスライドの調整をしている
彼は静かにモニターを操作しながら、ふと手を止めて、少し遠くにいる瑠璃を見つめる。
智貴(心の声)
「――なぜ、こんなにも目で追ってしまうのか。
彼女の言動は、時に支離滅裂で、予測できなくて。
でも……気づけば、そこにある“軸”が、気になってしまう」
智貴(無意識に)
「……“好き”……?」
自分の呟きに、ハッと我に返る。
智貴(首を振って)
「いや、それは定義が不十分だ。そもそも“好き”とは……」
〇午後・大学構内・中庭のベンチ・瑠璃&沙也香が談笑中
沙也香「……で?最近どうなの?あの“理屈先輩”とは」
瑠璃「“理屈先輩”て……まあ、智貴くんとは、うまくやれてるよ。
でも……なんか最近、ちょっと変な感じがして」
沙也香「変な感じ?」
瑠璃「話すたびに、“間”が変わるっていうか……
前より、言葉を選んでる気がして。
それって、なんだろ……意識、してるのかなって」
沙也香「ふーん。それ、“相手が”って話?それとも、“自分が”?」
瑠璃(目を見開く)
沙也香(ニヤリ)
「ま、気づいたときが恋の始まりってやつよ」
瑠璃「えっ、いやいやいや!そんなんじゃ!」
沙也香「ふふん、動揺がすでに“YES”って言ってるけど?」
瑠璃(顔を赤くしてジュースを飲み干す)
「し、しらないっ!」
〇夜・智貴の部屋・PC前で考え込む智貴
資料の画面を前に、思考は別の方向に流れている。
智貴(心の声)
「“好き”という感情は、報酬系の快感記憶と紐づいている。
だがこの感覚は、数値化できない――だからこそ、人間は振り回される」
智貴(深く息をつき)
「……なのに、彼女の声を聞くと、なぜ落ち着く?
視界に入ると、なぜ余計な計算が増える?
この非合理性は――感情、か?」
彼はため息をつきながら、画面を閉じる。
〇数日後・大学構内・プロジェクト内ワークショップ当日
「ありがとうの空間」展示が学内イベントで一般公開され、ゼミ生が来場者案内にあたっている。
来場者A「これ、学生さんが作ったんですか? すごいですね……」
来場者B「“感謝”ってテーマ、こんなに空間で伝えられるんだ……」
瑠璃(案内をしながら、どこか気もそぞろ)
(智貴くん……なんか最近、目を合わせてくれない)
〇控室・瑠璃と沙也香が二人きりの時間
沙也香「……気になるなら、聞けば?」
瑠璃「でも、“好きなの?”って直接聞くなんて、絶対無理!」
沙也香「違う違う。『なんか避けてる?』くらいのレベルでいいのよ。
……で、本当はさ、もう気づいてるんでしょ?自分がどう思ってるか」
瑠璃(ごまかすようにスケッチ帳を閉じる)
「……“一緒にいるのが落ち着く”って気持ちってさ、好きに入るの?」
沙也香「もちろん。“落ち着く”は、“安心する存在”ってことだもん」
瑠璃「でも、“刺激”とか“ドキドキ”とは違うよね?」
沙也香「それはタイプの違い。静かな恋だって、ちゃんと恋だよ」
瑠璃(ぽつり)
「……そっか。“静かな恋”……それ、いいかも」
〇夕方・仮設ルームの搬出準備・智貴と瑠璃が久しぶりに二人きり
瑠璃「……ねえ、ちょっといい?」
智貴「……ああ」
瑠璃「最近、なんか……避けてない?」
智貴(無言で少し考えてから)
「……否定は、しない」
瑠璃「……そっか」
智貴「君といると、計算が狂う。感情の変動が読めなくなる。
これは、僕にとっては“未知のノイズ”だ。……でも、嫌ではない」
瑠璃「……それ、“好き”ってことじゃない?」
智貴「……定義は未確定。だが、君に関わると、知らない自分に出会う。
それが、“知りたい”という衝動を生んでいる」
瑠璃(ふっと笑って)
「つまり……“もっと知りたい”って思うってこと?」
智貴「……ああ。もしそれが“好き”という定義なら――僕は、たぶん、それだ」
瑠璃「……うん。私も、たぶん、それ」
〇その直後・夕暮れの校舎の裏・二人が並んで歩く
瑠璃「“好き”って、よくわからないよね。
でも、こうして隣にいて、心が落ち着くなら、それでいいのかも」
智貴「……恋愛感情は、仮説と検証の繰り返しだな」
瑠璃「じゃあさ、ちょっとずつ、検証していこうよ。お互いを」
智貴「……了解。“共同研究”、開始というわけだな」
瑠璃(笑顔で)
「うん。“好き”の定義、見つかるといいね」
〇夜・智貴の部屋・彼の視線の先には開いたスケッチブック
瑠璃が置いていった「ありがとうの空間」初期デザイン案のコピー。
そこには、“人の気持ちを設計する”というタイトルが添えられている。
智貴(心の声)
「人の感情は、不確定要素に満ちている。
だが、その中に“確かにあるもの”を、誰かと共有できるなら――それは、きっと“関係”と呼べるのだろう」
彼は静かに、プロジェクトファイルに名前を記入する。
新テーマ:『好きの構造化と共有化に向けたプロトタイプ研究』
共同研究者:瑠璃
〇同時刻・瑠璃の部屋・彼女は小さな模型を組み立てている
小さな白い家のような模型。
その中心には2つ並んだ椅子と、丸い灯りがともっている。
瑠璃(心の声)
「“好き”って、じんわり広がる安心感。
そばにいたいって思うのも、笑ってほしいって願うのも――
全部まとめて、“これが私の好き”って言えるようになったら、嬉しいな」
模型の中に、小さな人型フィギュアを2つ置く。
瑠璃「……君と、わたし。ここから、はじまり」
〇翌日・ゼミ教室・発表準備を進める二人
智貴「今回のテーマ、“個人感情を構造化する試み”として出す。
共感は重視しすぎず、けれど拒絶されない形を目指す」
瑠璃「うん。“これって恋かも?”って気づくその瞬間を、空間にできたらって思ってる」
智貴(ふと視線を向けて)
「君が最初に言っていた“なんとなく”って、きっとそれだったんだな」
瑠璃「うん。理屈じゃない“ときめき”って、ね。
……でも今は、ちょっとずつ“理屈に近づいてる”気がする」
智貴「“共有できるときめき”……検証対象として、悪くない」
瑠璃「じゃあ、がんばろ。“共同研究”、ね」
〇夕暮れ・校舎の屋上・風に吹かれる二人の背中
瑠璃(モノローグ)
「“好き”って、最初はわからなかった。
でも今は、この人と一緒に考えていけるってことが、
何より“特別”なんだと思える。
この気持ちが、きっと、恋の入口。」
タイトルロゴ:
『となりの研究室で、きみと。』
【To be continued...】
ゼミメンバーが新テーマ「本音を言える空間」のお披露目準備を進めている。
瑠璃とはるなによる「ありがとうの距離」設計をベースにしたインタラクティブな展示。
咲子「おお~!このライト、心拍で色変わるの!?天才か!」
俊輔「反応速度に遅延がないのがすごい。センサーの質、高いな……」
拓海「“静かでも伝わる”って空間、実際に体験すると、けっこう沁みるね」
祐貴「なんか……ここにいると、自分の“輪郭”を意識する感じ。悪くない」
瑠璃(照れながら)
「ふふ、みんなが自然に“ありがとう”って言える場所、目指してみたの」
はるな「……一度、“言えなかった”からこそ、届くものもあるって信じてるから」
拍手と笑顔が自然に広がる。
〇教室の隅・智貴が1人でスライドの調整をしている
彼は静かにモニターを操作しながら、ふと手を止めて、少し遠くにいる瑠璃を見つめる。
智貴(心の声)
「――なぜ、こんなにも目で追ってしまうのか。
彼女の言動は、時に支離滅裂で、予測できなくて。
でも……気づけば、そこにある“軸”が、気になってしまう」
智貴(無意識に)
「……“好き”……?」
自分の呟きに、ハッと我に返る。
智貴(首を振って)
「いや、それは定義が不十分だ。そもそも“好き”とは……」
〇午後・大学構内・中庭のベンチ・瑠璃&沙也香が談笑中
沙也香「……で?最近どうなの?あの“理屈先輩”とは」
瑠璃「“理屈先輩”て……まあ、智貴くんとは、うまくやれてるよ。
でも……なんか最近、ちょっと変な感じがして」
沙也香「変な感じ?」
瑠璃「話すたびに、“間”が変わるっていうか……
前より、言葉を選んでる気がして。
それって、なんだろ……意識、してるのかなって」
沙也香「ふーん。それ、“相手が”って話?それとも、“自分が”?」
瑠璃(目を見開く)
沙也香(ニヤリ)
「ま、気づいたときが恋の始まりってやつよ」
瑠璃「えっ、いやいやいや!そんなんじゃ!」
沙也香「ふふん、動揺がすでに“YES”って言ってるけど?」
瑠璃(顔を赤くしてジュースを飲み干す)
「し、しらないっ!」
〇夜・智貴の部屋・PC前で考え込む智貴
資料の画面を前に、思考は別の方向に流れている。
智貴(心の声)
「“好き”という感情は、報酬系の快感記憶と紐づいている。
だがこの感覚は、数値化できない――だからこそ、人間は振り回される」
智貴(深く息をつき)
「……なのに、彼女の声を聞くと、なぜ落ち着く?
視界に入ると、なぜ余計な計算が増える?
この非合理性は――感情、か?」
彼はため息をつきながら、画面を閉じる。
〇数日後・大学構内・プロジェクト内ワークショップ当日
「ありがとうの空間」展示が学内イベントで一般公開され、ゼミ生が来場者案内にあたっている。
来場者A「これ、学生さんが作ったんですか? すごいですね……」
来場者B「“感謝”ってテーマ、こんなに空間で伝えられるんだ……」
瑠璃(案内をしながら、どこか気もそぞろ)
(智貴くん……なんか最近、目を合わせてくれない)
〇控室・瑠璃と沙也香が二人きりの時間
沙也香「……気になるなら、聞けば?」
瑠璃「でも、“好きなの?”って直接聞くなんて、絶対無理!」
沙也香「違う違う。『なんか避けてる?』くらいのレベルでいいのよ。
……で、本当はさ、もう気づいてるんでしょ?自分がどう思ってるか」
瑠璃(ごまかすようにスケッチ帳を閉じる)
「……“一緒にいるのが落ち着く”って気持ちってさ、好きに入るの?」
沙也香「もちろん。“落ち着く”は、“安心する存在”ってことだもん」
瑠璃「でも、“刺激”とか“ドキドキ”とは違うよね?」
沙也香「それはタイプの違い。静かな恋だって、ちゃんと恋だよ」
瑠璃(ぽつり)
「……そっか。“静かな恋”……それ、いいかも」
〇夕方・仮設ルームの搬出準備・智貴と瑠璃が久しぶりに二人きり
瑠璃「……ねえ、ちょっといい?」
智貴「……ああ」
瑠璃「最近、なんか……避けてない?」
智貴(無言で少し考えてから)
「……否定は、しない」
瑠璃「……そっか」
智貴「君といると、計算が狂う。感情の変動が読めなくなる。
これは、僕にとっては“未知のノイズ”だ。……でも、嫌ではない」
瑠璃「……それ、“好き”ってことじゃない?」
智貴「……定義は未確定。だが、君に関わると、知らない自分に出会う。
それが、“知りたい”という衝動を生んでいる」
瑠璃(ふっと笑って)
「つまり……“もっと知りたい”って思うってこと?」
智貴「……ああ。もしそれが“好き”という定義なら――僕は、たぶん、それだ」
瑠璃「……うん。私も、たぶん、それ」
〇その直後・夕暮れの校舎の裏・二人が並んで歩く
瑠璃「“好き”って、よくわからないよね。
でも、こうして隣にいて、心が落ち着くなら、それでいいのかも」
智貴「……恋愛感情は、仮説と検証の繰り返しだな」
瑠璃「じゃあさ、ちょっとずつ、検証していこうよ。お互いを」
智貴「……了解。“共同研究”、開始というわけだな」
瑠璃(笑顔で)
「うん。“好き”の定義、見つかるといいね」
〇夜・智貴の部屋・彼の視線の先には開いたスケッチブック
瑠璃が置いていった「ありがとうの空間」初期デザイン案のコピー。
そこには、“人の気持ちを設計する”というタイトルが添えられている。
智貴(心の声)
「人の感情は、不確定要素に満ちている。
だが、その中に“確かにあるもの”を、誰かと共有できるなら――それは、きっと“関係”と呼べるのだろう」
彼は静かに、プロジェクトファイルに名前を記入する。
新テーマ:『好きの構造化と共有化に向けたプロトタイプ研究』
共同研究者:瑠璃
〇同時刻・瑠璃の部屋・彼女は小さな模型を組み立てている
小さな白い家のような模型。
その中心には2つ並んだ椅子と、丸い灯りがともっている。
瑠璃(心の声)
「“好き”って、じんわり広がる安心感。
そばにいたいって思うのも、笑ってほしいって願うのも――
全部まとめて、“これが私の好き”って言えるようになったら、嬉しいな」
模型の中に、小さな人型フィギュアを2つ置く。
瑠璃「……君と、わたし。ここから、はじまり」
〇翌日・ゼミ教室・発表準備を進める二人
智貴「今回のテーマ、“個人感情を構造化する試み”として出す。
共感は重視しすぎず、けれど拒絶されない形を目指す」
瑠璃「うん。“これって恋かも?”って気づくその瞬間を、空間にできたらって思ってる」
智貴(ふと視線を向けて)
「君が最初に言っていた“なんとなく”って、きっとそれだったんだな」
瑠璃「うん。理屈じゃない“ときめき”って、ね。
……でも今は、ちょっとずつ“理屈に近づいてる”気がする」
智貴「“共有できるときめき”……検証対象として、悪くない」
瑠璃「じゃあ、がんばろ。“共同研究”、ね」
〇夕暮れ・校舎の屋上・風に吹かれる二人の背中
瑠璃(モノローグ)
「“好き”って、最初はわからなかった。
でも今は、この人と一緒に考えていけるってことが、
何より“特別”なんだと思える。
この気持ちが、きっと、恋の入口。」
タイトルロゴ:
『となりの研究室で、きみと。』
【To be continued...】



