「後、先日香水が届いたと思うけど、あれは私が錬金術で作った霊薬なの。体内で過剰反応している成分を無効化するものだから、もう発作は起こらなくなるわ」
「え……まさか!」
アデルはハッとした。そんなはずないというように慌てて髪につけていた白花を一つ手に取り、口の中に放り込む。
「嘘、嘘嘘嘘。発作が起こらない! これじゃ病弱でいられない!!」
狼狽するアデルに対して、真実に辿り着いたイザベルは呆れ返った。
「いつもタイミングよく発作が起こるから変だと思ってたけど、やっぱり偽装していたのね。お陰でずっと私はいいように使われ続けたわ」
アデルは勢いよく顔を上げた。いつものか弱さは消え、恨めしそうにイザベルを睨んでいる。
「……そんなの当然でしょ。妹のおまえは姉の私より下なんだから。敬い仕えて当然よ」
アデルの傲慢さに我慢できなくなったルーシャンが迫ろうとするが、イザベルがやめるように手で制す。
イザベルは大丈夫だと口だけ動かした。
「今日でそんな日々も終わりよ。お姉様は健康になってマクウェル家に嫁ぐ。私はエインズワース家に嫁ぐ。もう同じ屋根の下で暮らすことはないの」
「嫌よ、私は病弱なの。ロブ様とも結婚しない。これからも白花を摂り続けるわ!」
するとそれまで黙っていたルーシャンが口を開く。
「では俺から一つ有益な情報を。白花は臓器の解毒代謝の機能を低下させる。君も気づいているんじゃないか? 最近小さな薄いシミのようなものができていることに。近いうちに君の白い肌は老婆のようにシミだらけになるだろう」
アデルには思い当たる節があるようだ。頬をペタペタと触っている。
「白花で私の肌が? まだそんな歳じゃないわ。シミだらけなんて、老婆みたいだなんて……いやああっ!!」
絶望したアデルはその場に崩れ落ちる。激しく振った頭からは、髪につけていた白花がぽろぽろと落ちていった。



