美しく着飾っているが、所詮中身は底意地の悪い女ではないかと胡乱な視線を向けている。
場内の空気が変わったのを肌で感じ取ったロブは、しめたとイザベルを糾弾し始めた。
「実の姉の面倒も見ず、謝罪を受け入れようともしない。貴様は薄情な女だな!」
ロブに便乗するように、周囲からもイザベルを非難する声が聞こえ始めた。
「悪女の噂はあれど、入学してからアデル嬢の面倒をみていたから家族にだけには優しいと思っていたけど、そうじゃなかったのね」
「結局、噂通りの悪女ってことだろ」
「こんなのが妹だなんて、アデル嬢がお可哀想だわ」
イザベルへの非難が大きくなる頃合いを見計らって、ロブは高らかに宣言した。
「イザベル・ファロン。貴様のような残忍極まりない悪女との婚約を破棄する。そして俺はアデル・ファロンと婚約すると決めた!」
周囲からはロブを称賛する声と拍手が沸き起こる。気分が良くなったロブは、続いてイザベルの秘密を暴露した。
「ここに集まる男子生徒諸君に有益な情報を提供しよう。イザベルは今後誰とも結婚ができない。どうしてかって? それは背中に醜い傷があるからだ!!」
ロブから指を差されたイザベルは紅色の瞳を見開いた。
「ロブ様やめて。それは家族とマクウェル伯爵家だけの秘密よ」
深刻そうに俯き、憂えを帯びた声でアデルが嗜める。この場に居合わせた聴衆の目には、慈愛に満ちた聖女のように映っているに違いない。
けれど、イザベルには見えていた。俯くアデルの口端が僅かに吊り上がっているのを。
バレていないと思っているアデルは祈るように手を組み、涙を流しながら顔を上げて周りに懇願した。
「お願いです。どうか妹の秘密はここにいる皆さんと私の秘密にして下さい。このままでは妹はどこにも嫁げません。でも皆さんが秘密にしてくだされば、年上の貴族くらいには……」
「どこにも嫁げないというのなら俺がイザベルを貰い受ける」



