大丈夫なはずがない。イザベルのせいで計画が台無しだ!
内心怒り狂っていたが、顔を上げたアデルは声が出なかった。
何故なら、近くに立っている侍女が花瓶を落とし、飛び散った大きな破片がイザベル背中に突き刺さっていたからだ。
どうやら階段から転がり落ちてきた自分たちに驚いて、侍女が落としたらしい。
『申し訳ございません、お嬢様!』
顔色を失った侍女は今にも泣き出しそうだった。
貴族の令嬢に怪我を負わせてしまったのだから一大事である。解雇は免れないし、処罰も受けるだろう。
イザベルはアデルが無事か確認した後、侍女に向かって微笑んだ。
『大丈夫だから落ち着いて。すぐに医者を呼んでくれると助かるわ』
侍女は何度も頷いて、大急ぎで医者や執事を呼びに行った。
すぐに客室へ案内されたイザベルは医者の手当てを受けた。だが、怪我の傷は一生残ると診断された。
主催者であるエインズワース公爵とルーシャンは深謝してくれたが、イザベルがこれは事故だから誰の落ち度もないと答えていた。
気丈に振る舞うイザベルに、アデルは憎悪を覚えた。
(イザベルが後ろにいなければ今頃私が心配されていたのに。これじゃあ、あの子の方がルーシャン様の記憶に残ってしまう。悔しい。悔しい悔しい悔しい!!)



