(女子生徒を虐めている噂を流した黒幕は、アデルだったのね)
 イザベルは一気に奈落の底へ突き落とされた気分になった。入学してからこれまで、根も葉もない噂に散々苦しめられてきた。その度にアデルに相談して慰めてもらってきたのに。
(私は噂を流した張本人に話を聞いてもらっていたの?)
 真実を知り、気が遠くなるイザベル。自分はなんて馬鹿なのだろう。思わず失笑しそうになる。
 すると、今度はロブからとんでもない話が出てきた。

「なあアデル、俺と婚約しないか? 病弱でも構わない。もともと俺はアデルと婚約するはずだったし。今父上に頼んで誓約書の取り下げを王家に申請している。あの女の素行の悪さを説明すればきっと王家も理解してくれるだろう」
「まあ、嬉しいっ!」
 感極まったアデルは頬を赤らめ、ロブの胸に顔を埋める。

「ロブ様とすぐに婚約できないのがもどかしいわ。あの子の背中にある、醜い傷のせいでロブ様には迷惑を掛けてしまっているわね」
「まったくだ。あの女が婚約中に傷物にならなければ、誓約書なんてものは要らなかった。すぐに婚約破棄できた」
「そう言わないであげて。あれは私を庇ってできた傷だから」

 イザベルは背中に手を回し、指先で傷痕に触れる。