助手を求めているくらいだから、ウィリアムは自分の研究で手一杯かもしれない。教えるのが難しいならどんな勉強をしてきたのか教えて欲しい。
 イザベルが固唾を飲んで見守っていると、ウィリアムは快く引き受けてくれた。
「錬金術仲間ができるのは嬉しい。参考書と纏めたノートを準備しておくから明日から教える。ところで、光の精霊を呼び出してくれないか? 俺の研究には光の精霊の力が必要なんだ」

「お役に立てるのなら構いませんよ。因みに、バートラムさんは錬金術で一体何の研究を?」
 この三日間、イザベルは頼まれた薬草を集めているだけでウィリアムが何をしているのかは知らない。錬金術で作れるものは霊薬だが、果たして何に対しての霊薬を作っているのだろう。

 ウィリアムは困った様子で頬を掻く。やがて、遠くを見つめるような目で天井の一点を見つめた。
「…………大事な人を癒す薬の研究だ」
 あまり詮索されたくないのかウィリアムは小さな声で呟くと、作業に戻ってしまう。
 けれどその声音はどれほど切望しているか物語っていた。

 錬金術と聞けば大半の人は眉を顰める。彼は霊薬を完成させるために後ろ指を刺されながらも、完成を追い求めてきたに違いない。
 イザベルはウィリアムの研究に真摯に取り組もうと改めて思った。