作業に戻ったウィリアムは、イザベルが摘んできた野草を一つ取り、皿の上に置いた。
そこに火をつけたマッチを入れ、聞いたことのない言葉を唱える。普通なら赤く燃えるはずの火が青く燃え上がる。
野草はあっという間に燃えてしまったが、灰はどこにもない。なんとも不思議な光景だ。
「今、この部屋を浄化した。空気が悪いと精霊が寄り付かず、力を貸してくれない」
言い終えるや、室内には数え切れないほどの光の玉が集まっていた。前にも話していたように、ウィリアムは光の精霊を呼び出すのは苦手らしい。集まってきたのは光の精霊以外の精霊たちばかりだった。
それでもこの光景は圧巻である。
「バートラムさん、空いている時でいいので私に錬金術を教えてくれませんか?」
感動したイザベルは思わずウィリアムに申し出た。
この国に錬金術を扱える人間はほとんどいない。関連する書物はほとんど焚書され、学園の図書館にもほんどない。独学といっても入門が限界だ。
錬金術を研究しているウィリアムに出会えたのは幸運だった。これを機に錬金術を教わりたい。
(お姉様の霊薬を作って健康にする。それで私は自由を手に入れるわ)
ロブとの問題は残るが、少なくともアデルが健康になればイザベルは世話役という立場から解放される。
「ダメ、かしら?」



