「ただいま!すみれ!ゆき!」
私があわてて帰ると、部屋にふたりの姿はなかった。
「あれ…、まだ帰ってきてないのかな……?」
一緒に帰ることがほとんどだから、ふたりが遅いなんてめずらしい。
みんなでどこかに寄っているのかな……?
そう気にすることでもない、そのはずなのに………。
でも、なんだかすみれの言葉が気にかかる。
『これからもずっと桃花の夢を応援してる。これからもずっと、俺たちがそばにいる』
どうして改めてあんなこと言ってくれたんだろう……?
ただ単に私の応援をしてくれただけにも聞こえるけれど、なんとなくお別れの言葉みたいで胸が少しざわざわする……。
私は自分の手をぎゅっと握りしめた。
大丈夫、だよね……?
すみれ、ゆき、ちゃんと帰ってくるよね……?
時が経てば経つほど、不安が募ってくる。
『俺は願ったんだ。桃花が、学校でも楽しく過ごせますようにって』
校外学習で訪れたテーマパーク。
その観覧車に一緒に乗ったとき、すみれはそう言っていた。
すみれの願いは、私が学校で楽しめること。
それはすみれたちのおかげで達成できていて、私は自分の夢を口にできるようにもなったし、その夢に向かって進んでいけるようにもなった。
羽丘さんっていう、新しいお友達もできた。
「もしかして…………」
私ははっとする。
すみれの願いは叶えられた、ってことだよね……?
何故だか、すみれたちが私のそばからいなくなってしまうような気がした。
少しずつ少しずつ、陽が傾いて、オレンジ色の夕焼けが宵闇に吸い込まれていく。
いつもなら帰ってきている時間のはずなのに、すみれとゆきはまだ帰ってこない。
「すみれ……!!ゆき……っ!!」
私はいてもたってもいられなくて、玄関を飛び出した。



