図書室に入ると、パソコンを前にカタカタと子気味良い音を立てている女の子が目に入った。
あ、あの子……。いつも図書室にいる子だ……。
おさげに結った髪を、ちょこんと肩に垂らし、真剣な表情でパソコンを見つめている。
私は持っていた本を返却棚に置き、今日借りる本を探すため、図書室内をうろうろと歩く。
今日はどんな本にしようかな?
やっぱり恋愛ものかなぁ……。キュンとした気持ちで眠りたいかも!
そういえば、ゆきはどんな本が好きなんだろう?
いつも私が読む本に付き合ってくれているから、今度はゆきの好きそうな本を一緒に読んでみようかな。
そんなことを考えながら、本棚の間を歩く。
そうして女の子の後ろを通ったとき、ふと彼女のパソコンの画面が見えてしまった。
あれ……?もしかして……。
「小説……?」
思わずもれてしまった言葉に、おさげの女の子がぱっと私を振り返る。
「あ、ご、ごめんなさいっ!」
あわててあやまる私の顔を、じっと見つめる女の子。
「あ。いつも図書室に来てる……」
「つ、月野 桃花、です……」
「羽丘 菖蒲です」
羽丘さんって言うんだ。
「あ、勝手にごめんなさいっ!ちょっと目に入っちゃって……」
「ううん、大丈夫」
「あの、…もしかして、小説を書いてるの……?」
私の質問に羽丘さんは、少し照れくさそうに答える。
「そうなの…お話を書くのが好きで……」
私と一緒だ……!
きっと以前の私だったら、そのまま自分の話もできなくて、話したくても迷惑になるかもって自信がなかった。
でも、みんなと過ごして、少しずつ変わってきた今の私なら……。
私は勇気を振りしぼって言葉を紡ぐ。
「わ、私も!私も、小説家になりたくて、お話を書いてるんだ!」
私の言葉に、羽丘さんは目をぱちくりさせる。
「本が大好きで、お話を書くのも、すっごく好き……!」
驚いたように聞いていた羽丘さんの表情がにこりと笑顔になる。
「やっぱりそうなんだ。月野さん、いつも図書室で本借りてるの、見てて知ってたから。本好きなのかな、とかもしかして書いたりしてるのかな、って思ってたの」
「わ、私も!羽丘さんのことよく図書室で見かけてた!」
「一緒だね」
「う、うん!あ、あの!……もしよかったら、お、お友達になりませんかっ!!」
自分からこんなふうに積極的にお話しするのは、このときがはじめてだった。
緊張しながら羽丘さんのお返事を待っていると。
「もちろんっ!連絡先交換しよっ!」
「ありがとうっ!」
そうして、私と羽丘さんは連絡先を交換した。
羽丘さんは思ったよりもさばさばしていて、委員長タイプっぽい女の子だった。
またおしゃべりしようと約束して、私はうきうきで図書室を出た。
陽毬ちゃんが転校してから、やっと新しい友達ができた。
これもきっと、みんなのおかげだ!
昇降口で靴を履き替えるときも、気が急いて仕方がなかった。
「早くみんなに!すみれに報告しなくちゃ!」
私、友達ができたよ、って!!



