「さて!私は図書室に寄って帰るけど、みんなも一緒に帰る?」
私がそうたずねると、何故だか4人は顔を見合わせた。
すみれが口を開く。
「俺たちはもう少ししたら帰るよ。桃花、先にひとりで帰れるか?」
「え?うん、大丈夫だけど…」
すみれが柔らかく微笑む。
「それじゃあ、また」
「うん……?」
なんだかみんなのようすを変に思ったけれども、私はひとりで教室を出ることになった。
すると。
「桃花っ……!!」
廊下で呼び止められて、私は振り返る。
振り返ったと同時に、だれかにぎゅっと抱きしめられた。
「え……?すみれ?」
それはさっき別れたばかりのすみれで、すみれは私をぎゅうっと強く抱きしめた。
学校ではよくそらが飛びついてくるけれど、すみれが私に抱きつくなんて、初めてのことだった。
「……桃花、ありがとう」
「え?え?お礼を言うのは私のほうで……」
すみれはふるふると首を横に振る。
「桃花と一緒にいられて、一緒に学校で過ごせて、すげー楽しかった」
「え?」
「これからもずっと桃花の夢を応援してる。これからもずっと、俺たちがそばにいる」
すみれの言葉がうまく理解できず、私は混乱する。
え?え?なに?どういうこと?
なんでそんなことを言うんだろう?
まるで、お別れみたいな…………。
すみれはぱっと私から離れる。
「ごめん。急に伝えたくなったんだ」
温かな温もりが遠ざかって、なんだか急に寒くなったような気がした。
「それじゃあ、気をつけて帰れよ」
「あ、うん……」
すみれはくるりときびすを返して、また教室に戻っていった。
「……???」
私はわけがわからないまま、図書室の方へと足を向ける。
すみれ……?どうしちゃったんだろう?
ふだんは照れてあんなこと言わないのに……?
なにか少し胸がざわつく感じがしたけれど、私はそれにふたをして図書室に向かった。



