「こんなところにいたのか」
「すみれ…?」
学校の空き教室で小説を書いていると、そこにすみれがやってきた。
「たまには雰囲気を変えて、違う場所で書いてみようかなって」
家や図書室でもいいんだけど、今日は天気が良かったから、夕陽が見える教室に来てみたんだ。
「ふーん」と言ってすみれは、私の座る席の前の席に腰掛ける。
椅子の背もたれに腕を乗っけて、私をじぃっと見つめた。
「す、すみれ?なに?」
すみれが私の顔をじーっと見るものだから、なんだか気になって集中できないよ。
「いや?別に?」
「別にってことないんじゃない?」
「まぁ、そうだな…。桃花、変わったなって」
「え?」
すみれの言葉に、私は目を丸くする。
「変わった?」
「ああ。ずっとひとりで本を読んで、引きこもってた以前の桃花とは大違い」
「引きこもってたって……」
たしかにその通りかもしれないけど……。
以前の私なら、放課後は図書室でさっさと本を借りて帰るだけだった。
こんなふうに、放課後の空気感を感じながら小説を書くなんて、想像もしていなかったと思う。
「だから、なんか、俺も嬉しいんだよ」
「え……?」
「桃花が楽しそうにしている日が増えてさ」
すみれ……。
「うん!今すごく楽しいよ」
すみれ、ゆき、そら、あかね、そして陽毬ちゃん。
みんなのおかげ。
私が失敗して落ちこんだときも、いつもにぎやかなみんながいてくれた。
だれだって落ちこむことはある。
だけど、もうちょっとがんばってみようって、前を向けたのは、いつも支えてくれるみんながいるからなんだ。
周りのひとは、きっとみんなすごい。
比べものにならないくらいに努力していて、きっとものすごくがんばってるんだ。
そういうひとたちが眩しくて、気後れしちゃうときもあるけれど。
私は私だ。
自分のペースで、楽しく大好きなことに取り組んでいきたい。
そうしたらきっといつか、結果だってついてくる気がするんだ。
私がいまできることは、大好きな小説を楽しく書くことだけ。



