すみれの願い。
それは、私が学校で楽しく過ごせること。
それってもしかして、すみれとゆきと一緒に見た、流れ星の日に……?
あの日私のつぶやいた、すみれとゆきが人間でお話ができたらいいのに、って。
それが叶えられたんだと思ってた。
もちろんそれもあるのかもしれないけど、もしかしてすみれの、私が学校で楽しく過ごせますように、ってお願いも叶えられた……のかな?
胸がぎゅっとなる。
嬉しいような、泣きたいような、心がぎゅってなる感じ。
この気持ちって、なんなんだろう……?
「もうすぐ頂上だ」
すみれに言われて、私ははっとして窓の外を見る。
大きな建物たちが、小さく見える。
「そういえば、観覧車の頂上と言えば、よくジンクスがあるよね?」
「ジンクス?」
恋愛小説や少女漫画でもよく聞くジンクス。
「観覧車の頂上で好きなひととキスをすると、一生一緒にいられるっていう……あ、」
口にしてしまってから、私はあわてる。
す、すみれ相手になに変なこと言ってるんだろう!
すみれは目を丸くして私の話を聞いていて、それからふっと笑みを浮かべた。
「桃花、それって、俺とキスしたい、って言ってる?」
「ち、ちがっ……!」
すみれが立ち上がって、私のほうへとやってくる。
観覧車のゴンドラがゆらゆらと揺れる。
「わわっ!」
手すりに手を伸ばそうとする私を、すみれが支えてくれた。
「ありがとう……じゃなくて!すみれ、急に動かないでよっ」
すみれは私の隣に腰を下ろす。
「桃花が俺とキスしたいとか言うからだろ」
「ええっ!い、言ってないよっ!!」
なんだか変にドキドキしてしまって、私は心を落ち着かせようと深呼吸をくり返す。
ひとを好きになる気持ち、恋をする気持ちって、こんな感じなのかなぁ……。
たくさんの本を読んで恋した気になっていたけれど、実際のところは私にもわからない。
私がすみれにドキドキする気持ちは、なんて気持ちなんだろう……?
そうこうしているうちに、頂上から徐々に地面へと近づいていく。



