かたかたと音を立てながら、観覧車のゴンドラがやってくる。
「桃花」
差し出された手に引っ張り上げられる形で、私もゴンドラに乗りこんだ。
「いってらっしゃい!」と笑顔のスタッフさんに手を振って、私は座席にゆっくりと腰を下ろした。
「やっと静かになったか」
浅くため息をついたすみれは、やれやれといった感じで視線を窓の外に向ける。
私と一緒に乗ることになったのは、すみれ。
私とすみれがパーを出し、3人がグーを出して、見事に分かれたのだった。
今日は一日中ずっとにぎやかだったから、なんだか急に静かになって変な感じ。
「わあ……!!さっきの動植物園があんなに小さく見えるよ!」
おばけ屋敷もジェットコースターも追い越して、ゴンドラはゆっくりゆっくり頂上に向かって上がっていく。
「今日は、すごく楽しかったなぁ……」
ついこの前まで動物だったみんなと、こんなふうに校外学習に来られるなんて思ってもみなかった。
みんなのおかげで、すっごく楽しかった。
美術館ではあかねの嬉しそうな顔が見れたり、動物園では珍しくそらが甘えてきたり、ゆきも植物園で楽しそうにしていたっけ。
おばけ屋敷ではみんなに迷惑もかけちゃったけど、すみれが手を引いてくれて…。
本の世界に引きこもってばかりだった頃には、きっと体験できなかったものばかり。
きっと小説を書いてみよう、って思わなかったら、こんなふうに感じたひとつひとつを大切にできなかったかもしれない。
「あ!そうだ!忘れないうちにメモしなくちゃ!」
私はあわててポケットからメモ帳を取り出す。
今日楽しかったこと、その楽しかった中で感じたこと。
小説のためだけじゃなくて、この気持ちを忘れずにとっておきたい。
そうしてもくもくとメモをして2,3分。
よし!と顔を上げると、向かいに座ってこちらを見ていたすみれと、ばっちり目が合った。
「あ!ご、ごめんね!すみれ!つまんなかったよね?」
そう申し訳なく思いながらすみれのようすをうかがうと、すみれは「いや」と首を横に振る。
「桃花が楽しそうに書いてるの、見てて楽しいから」



