菊川 陽毬ちゃんは、私と同じ、中学二年生の女の子。
中学に入って初めてできたお友達。
私と同じように本が大好きで、将来は小説家になりたいって言ってた。
「桃花は!?書かないの?」
「うーん、私は……」
二人で本の感想を話していたとき、ふとそんな話になった。
陽毬ちゃんは、「読んでいたら、書いてみたくなっちゃった!」と言っていた。
その時の私は、はっきり自分の気持ちを口に出せなかった。
読むことはもちろん大好き。
でも読んでいるからって書けるものなのかな?
書くことにももちろん興味はあるけれど、私なんかが書けるのかな…?
「私は小説家になりたい!読んでいる人を、現実では体験できないような、壮大な世界に連れて行ってあげるんだ!」
そう夢を語る陽毬ちゃんの瞳は、すごくきらきらしてた。
「ねえ!桃花も一緒に小説家を目指そうよ!一緒に大好きな本を出そう!」
決意の固まっていない私は、陽毬ちゃんの言葉にあいまいにうなずいた。
けれど間もなくして陽毬ちゃんは、両親の仕事の都合で遠くに引っ越すことになってしまった。
せっかく仲良くなれたのに、同じ中学に通えたのは、三か月くらいだった。



