「ゆき、私……っ」
私の言葉をさえぎるように、ゆきは言葉を重ねる。
「桃花、よく聞いて」
「え?」
「ものごとはね、最初からうまくいったりしないよ。桃花が読んできたたくさんの物語の主人公だってそうだろう?最初はやっぱりうまくいかなくて、それでもあきらめずにがんばっていくんだ」
「うん…」
ゆきの声はとても穏やかで、小さな子に言い聞かせるみたいに優しかった。
「たった一回のことを気にして夢をあきらめてしまうなんて、もったいないと僕は思うよ。桃花は、どんな小説家になりたいんだっけ?」
ゆきの問いかけに、私はかみしめるようにその言葉を口にした。
「だれかを元気にできるような、そんな物語を書ける小説家…」
ゆきはよくできました、と言うように私の頭を優しくなでた。
「そうだね。だれかを元気にしたいなら、まずは桃花が元気にならなくちゃ」
「う…たしかにその通りかも……」
「まずは身体を元気にしよう。それからしっかり落ちこんで、また桃花らしく自分のペースで物語を紡いだらいい」
「うん……そうだね」
私はまた布団にもぐりこむ。
「ゆき、ありがとう…」
ゆきはまた優しく微笑んだ。
「僕もすみれも、きっとそらやあかねだって、みんな桃花を応援してる。桃花なら大丈夫!」
「うん……!」
ゆきの言葉が、温かく私の心にしみわたっていく。
そうだよ。
一度失敗したくらいで自分の夢を投げ出してしまうなんて、もったいないよね。
私はやっと、夢への一歩を歩みだしたばかりなんだから。
他と比べたってしかたがない。
心に雨が降る日もある。
私は私のペースで、また大好きな物語を作り出していこう。
熱が下がって、元気になったら、どんなお話を書こうかなぁ…。
私は想像をふくらませながら、また眠りに落ちていった。



