ふと目を覚ますと、隣ですみれが寝ていて、私は一瞬驚いたけれど声を上げないように口に手を当てた。
もしかしてすみれ、私を心配してついていてくれたのかな?
今何時だろうと時計を見ると、三時間くらい眠っていたみたい。
静かにドアが開いて、ゆきが入ってくる。
「桃花、起きてたんだね」
「ゆき」
「具合はどう?」
「まだ少しだるいけど、さっきよりはぜんぜんいいよ」
「よかった」
私の返答に、柔らかく微笑むゆき。
ゆきはお盆の上に水の入ったコップと、冷却シートを乗せていて、それをベッド横のサイドテーブルに置いた。
「ゆき、ありがとう。看病してくれたんだね」
「とくになにもしてないよ。ただ桃花のそばにいただけ」
「うん…」
でもそれがとてつもなく嬉しいんだ。
体調が悪いときって、なんだか心細いから。
だからかな、私の口からはなんだか勝手に言葉があふれてきた。
「ゆき、あのね、」
「うん」
「小説のコンテスト、だめだったんだ……」
そう口にすると私は思ったよりも自分がショックを受けていたことに気がつく。
「あんなにみんなに応援してもらって、協力までしてもらったのに。私、結果を出せなかったの…」
ゆきは静かに私の話を聞いてくれている。
「私、もしかしたら小説を書く才能ないのかも…」
だって陽毬ちゃんは書き始めてあっという間に賞を取って、それからも立て続けに賞を取り続けている。
「陽毬ちゃんはすごいんだ。陽毬ちゃんも私と同じコンテストに出してたみたいで、賞も取ってたの。私と違ってきっとすごく面白いお話を書いたんだと思う」
それに比べて、私のお話はきっとすごく面白くなかったんだ。
今まで本を読んできただけで、書くのは初心者。
そんな私が急に賞なんて取れるはずないよ。
一生懸命書いたお話だけれど、私なんかじゃ…………。
「桃花」
ゆきの声に、私ははっとして顔を上げる。
ゆきは私のあごに手を当てて、自分の顔を近づける。
そうしてさっきと同じように、こつんと自分のおでこをわたしのおでこにあてた。
「うん、まだ熱があるね」
そう言ってゆきは私のおでこに冷却シートを貼る。



