一本書き上げたからといって、これで終わりなわけではない。
小説家を目指す者たるもの、これからもたくさんの物語を書いていかなくてはならない。
「うーん、次は、どんなお話を書いてみようかなぁ。西洋ファンタジーもいいし、ミステリーなんかも挑戦してみたいかも!」
そんなふうに次の小説の案を練っていると、無造作に頭をなでられる。
「す、すみれっ!ちょっとなにっ?」
こんな風に髪をぐしゃぐしゃになでてくるのは、すみれだけだ。
「別に」
「別にってことないでしょっ?」
「楽しそうにお話考えてる桃花が可愛かっただけ」
「うぐっ……」
すみれはときどき私をドキッとさせるようなことを言う…。
そんな優しい顔で言われたら、だれだってドキッとしちゃうかも。
私は照れ隠しに頬をふくらませた。
「ま、次から次へと書くのもいいけど、根詰めすぎんなよ」
「え?」
「桃花はすぐ無理するからな。この前からずっと机に向かいっぱなしだし」
「そ、そんなこと…」
「あるだろ。たまには好きに本でも読んだら?」
たしかにすみれの言う通りかも。
最近本読めてなかったし、またたくさん読みたい!
「うん!そうだね。ありがとう、すみれ」
ちょっとぶっきらぼうだけれど、すみれはすみれなりに私を心配してくれているのがよくわかる。
一作品完成したわけだし、次の作品はのんびり考えようかな。
なんてことを思っている間に、中間試験がやってきて、私はテスト勉強に追われることになった。



