私は道路わきの花壇に腰を下ろした。
ど、ど、どうしよう……!
学校に戻りたいけど、でも足が痛くて戻れないし…。
見回りの先生を待つ?でもそれっていつ来てくれるんだろう?
走っている生徒もまったく見かけなくなってしまった。
もしかしたら私が一番最後なのかもしれない。
そう思ったら、なんだか急に心細くなってきてしまう。
すみれ、ゆき、そら、あかね……、どうしたらいい?
どうしよう、どうしよう、ってそんなことばかりを思っていたら…。
「桃花っ…!」
名前を呼ばれて、私はぱっと顔を上げる。
「すみれ……?」
そこには息を切らしたすみれの姿があった。
「どうしてここに…?」
「もうみんな戻ってきてるのに、桃花の姿がないから探しに来たんだ」
「そ、そうだったんだ…」
すみれの顔を見てほっとしたせいか、さっきの不安な気持ちはうそみたいにどこかにいっていた。
「学校戻るぞ」
「あ、うん!あ、で、でも……」
私は立ち上がりながら痛む足に視線を向ける。
すみれもそれに気がついて、私の視線の先を追った。
「足、痛むのか?」
「うん…、痛めちゃったみたいで…」
怒られるかな、と思いながら、すみれのようすをうかがう。
しかしすみれはなにも言わず、私を横抱きに抱え上げた。
「きゃあっ!」
自分の身体が急に宙に浮いて、私は思わず驚きの声を上げる。
「歩けないなら、俺が抱えていく」
「ええっ…!で、でも、」
重くないかな?いやきっと重いよね?
すみれはなにも言わず、私を抱えて歩き出す。
恥ずかしいけれど、でもすごく嬉しくて、いつもより忙しなく動く心臓の音が、すみれに聞こえちゃわないか心配だった。
だけど、さっきまで心細くて不安だった気持ちはあっという間に消えていて。
きっとすみれが来てくれたからだ。



