「もっ、もうっ、む、無理っ……」
マラソン大会が始まって、どれくらいの距離を走ったかな。
私は早々に限界をむかえて、近くのベンチに腰を下ろした。
マラソン大会は校庭を走るのではなく、中学校周辺を一周することになっている。
すみれとそらはもちろん、スタートしてあっという間に姿が見えなくなってしまった。
ゆきもなんだかんだ先頭集団と一緒になって走って行ってしまったし、ゆっくり並走していたはずのあかねは、気がついたらいなかった。
もしかしたら私よりも運動が苦手で、早くに疲れちゃったのかも…?
そうして私も走ることに疲れて、少し休憩。
「はーっ、苦しいっ」
休んでも歩いてもいいから、とにかくゴールしなくてはいけないのがマラソン大会のルールだ。
「わあ……空が青いなぁ、いい天気だなぁ……」
現実逃避、もとい休憩する私の前を、クラスメイト達が軽快な走りで通りすぎていく。
みんなすごいな…。
私なんて、すぐに疲れて休憩しちゃったのに。
みんなはきっともう少しだけがんばろうって、諦めずに走ってるのかな…。
そこにあかねがふらふらとやって来る。
「もっ、桃花ちゃん、きゅ、休憩?先に行ってるね…っ」
あかねもきっとマラソンは苦手なんだと思う。
けれど、小さな身体で一生懸命走っている。
「よし!私も休憩ばかりしていないで、もう少しがんばって走ってみよう!」
そう気合を入れベンチから立ち上がる。
しかし走り出してすぐに、私は足に違和感を感じた。
その違和感はだんだんとズキズキとした痛みに変わっていく。
あ、あれ……?もしかして、私、足痛めちゃった…?
とくに転んだり、くじいたりはしていないはずなのだけれど、もしかしてあまりに走らなさすぎて、足が悲鳴を上げているのかもしれない。
うう、こんなことすみれに知られたら、また運動不足だって怒られちゃうよ……。
少しでも前に進もうと歩みを進めるけれど、歩くことすらしんどくなってきてしまった。



