「桃花、マジでごめん…」
「全然大丈夫だよ!支えてくれてありがとう!」
さて、次はなにを試してみようかな、と思っているとすみれが私の前に出る。
「今度は俺がやる」
「え?」
「そらなんかに任せてたら、桃花が怪我するかもしれない。俺が手伝う」
「あ、ありがとう、すみれ。じゃあ、お願いしようかな?」
次に試してみるのは、いわゆる「壁ドン」である。
女の子が壁に背をあずけて、その壁に男の子が手をつく、ってやつなんだけど……。
それのどこにドキドキする要素があるんだろう……?
とは思いつつも、とにかくものは試し!やってみよう!
「じゃあ、私が壁に立つから、すみれはそこに手をついてみて」
「え、それだけか?」
「うん」
すみれは不思議そうに私の顔の横に手をついた。
「こうか?」
「お、おお……っ」
すみれが私を見下ろす。
これまた整ったクールな顔が間近にあって、なんとも落ち着かない気持ちになる。
さらにすみれは、「なぁ、桃花、こんなんでいいのか?」と平気で距離をつめてくる。
「ちっ……!近い近いっ……!!」
いかにすみれといえど、その綺麗すぎる顔で近寄られると、さすがにドキドキするっ。
「はっ……!これだ!」
私はまた感じた気持ちをノートにメモしていく。
やっぱりドキドキのシチュエーション定番とあって、本当にキュンとするものなんだ!
今自分が経験して感じたことが、もしかしたら小説にいかせるかもしれない。
私がノートに走り書きをしていると、すみれはそのノートを覗きこむようにさらに私に近づいてくる。
「なにかわかったのか?」
「あわわわっ!!あ、ありがとうすみれ!もう大丈夫っ!!」
「…?そうか」
そらもそうだけど、すみれも距離感がおかしいっ。
男の子の姿でそんなに近づかれたら、耐性がなさすぎて私の心臓が持たないよっ…!



