休み時間。
私が教室の自分の席で頭を抱えていると、ノートを覗きこむようにすみれが言う。
「「寝る前に読んでハッピーな気持ちになれる恋愛小説」「ドキドキキラキラを詰めこみたい」……、ふーん?」
「ちょっとすみれ!勝手にノート音読しないでっ」
小説を書こうと決めてから、思いついたことをメモしているノート。
それをすみれが音読するものだから、私はあわててノートを手で隠した。
「桃花、小説のテーマ、恋愛ものにしたのか」
「う、うん…」
「桃花って、好きな男子いるの?」
「うぐっ…」
すみれに痛いところをつかれる。
「ど、どうせすみれだって、恋をしたこともない人間が、恋愛ものなんて書けるわけがないーって言うんでしょ?」
恋でドキドキしたこともない私が、読んでくれるひとをドキドキさせるなんて無理なのかなぁ……。
けれどすみれは首を横に振った。
「そんなこと言うわけないだろ。恋を知らないなら、知っていけばいい」
「え……?」
恋を知らないなら、知っていけばいい…?
それってどういう意味?
「なになにー?なんの話っ?」
そこに元気にやってきたのは、いつも明るいそら。
人間の姿なのに、なんだか揺れる犬のしっぽが見えるみたい。
「あ、そら」
「やっほー、桃花っ!なに?桃花の恋バナ?」
「あ、いやそういうわけじゃないんだけど……」
私はそらにも小説を書いている話をした。



