『私は小説家になりたい!読んでいる人を、現実では体験できないような、壮大な世界に連れて行ってあげるんだ!』
いつかの陽毬ちゃんの言葉を思い出す。
私もだ…、私もだよ、陽毬ちゃん。
「私も……。ううん、…私は、小説家になりたい……!私の心を楽しませてくれたたくさんの物語みたいに、私もだれかの元気になれるような、物語を書いてみたい……!」
私はこのとき初めて、自分の夢を口にした。
自分なんかができるわけないって、夢を口にすることすら恥ずかしいって思ってた。
でも、違った。
夢を口にすると、何故だか力がわいてくるんだ。
実現できるようにがんばりたいって気持ちが、どんどんわいてくる。
おそるおそるすみれとゆきの顔を見ると、ふたりは嬉しそうに笑っていた。
「いいんじゃないか、小説家。桃花なら、きっとなれる」
「うん!僕も桃花が書いたお話、読んでみたいよ」
すみれとゆきの言葉に、自分を肯定してもらったみたいな気持ちになる。
私でも、小説家になりたい、って言っていいんだ!
「そうと決まれば、さっそく書かなくちゃな」
「え?」
「小説だよ。小説も書かずに小説家になれるとでも思ってるのか?」
「うぐっ……」
すみれの言う通りだ。
小説家になりたいなら、とにかくお話を書いてみなくちゃ…!
「私でも、書けるかな……」
そう少しまた弱気になりかけていると、すみれは私の頭を乱暴になで、ゆきは優しく手を握ってくれた。
「桃花なら大丈夫だよ」
「ま、俺らもついてるしな」
頼もしいふたりに、私は勇気をもらう。
「うん!がんばってみるよ!ありがとう!ふたりとも!」



