借りた本を読みたい気持ちをぐっと堪えて、私は机の上に広げた作文用紙に向き合う。
「んー~、将来の夢、かぁ……」
『将来の夢』。
なりたい職業。
それはもうずっと考えていて、でも、口に出せないでいる…。
なれるかもわからないし、私なんかが目指せるものなのかな……。
……私は、小説家になりたい……んだと思う…。
本を読むことは大好き。
でも書いたことはまったくない。
そんな私なんかが、小説家になりたい、なんて言ってもいいのかなぁ……。
「…ねえ、すみれとゆきは、将来の夢、ってなにかあるの?」
暇そうに私をながめていたすみれと、隣でにこにこと私を見ていたゆきは、口をそろえて言った。
「「桃花と一生いっしょにいること」」
かっこいい男の子の姿になったすみれとゆきからそんなことを言われて、一瞬ドキっとしてしまう。
「そ、そりゃあそうだよね!家族だし…!」
すみれとゆきにドキドキするなんておかしな話だ。
ふたりは家族なんだから。
「…桃花の夢は、小説家じゃないの?」
「え……?」
ゆきの言葉に、私は目を丸くする。
ゆきは優しく微笑んでから、私に問いかけた。
「桃花は本が大好きだよね。いつも僕たちに本の感想を聞かせてくれる。大好きな本の話をする桃花は、いつも楽しそうできらきらしてる。本当は、こんなお話が自分も書けたらなぁ、って思ってるんじゃない?」
「…それは、……」
ふだん何気なく使っている言葉たちが、私の胸をドキドキさせたり、悲しくさせたり、思わず笑ってしまうような、物語に変わる。
それって本当にすごいことだ。
私にとって、寝る前の本を読む時間は、とても幸せなひととき。
元気がないとき、落ち込むことがあったとき。
本を読むと、あっという間にその世界に入りこむことができて、悩んでいたことなんてどこかにいっちゃうみたい。
私がだれかにとっての、そういう世界を生み出せたら……。



