そうしていつものように学校への道のりを歩く。
今日はすみれとゆきも一緒だ。
「えっと…、ふたりも、学校に行くの?」
「当然だ」
「桃花のそばにいたいからね」
ちゃんとうちの中学校の制服も着ていて、私となにも変わらない、普通の中学生に見える。
なんだか、物語の世界に入りこんだみたいだ。
ずっと一緒にいたねこのすみれとゆきと、こんなふうに学校に行けるなんて夢みたい。
もちろんまだ戸惑いはあるけれど、本好きな私は、このファンタジックな展開に少しうきうきし始めていた。
いつもの通学路。
私はとあるお家の前にやってくると、庭先をのぞいた。
「そら~」
いつもの習慣で、その名前を呼んでしまう。
けれどその日は、そらが駆け寄ってくることはなかった。
ラブラドールレトリバーのそら。
いつもなら私が通るとすぐにあいさつに来てくれるのに。
今日はお出かけしてるのかな……?
「おい桃花、なにしてるんだ、行くぞ」
「あ、うん!」
すみれとゆきのほうに駆け寄ろうとしてあわてた私は、なにか石のようなものにつまずいてしまう。
「わわっ」
転びそうになった私を、すみれとゆきが支えてくれた。
「まったく、そそっかしいな」
「大丈夫?桃花」
「うん、大丈夫!ありがとう!」
すみれとゆきを見上げると、ふたりは心配そうに私を見ていた。
その目が、ねこのときのすみれとゆきと同じで、ああ、やっぱり、二人はすみれとゆきなんだなぁ、って、そんなことを思った。



