一途すぎる上司は、一人でも楽しそうな部下を甘やかしたい

「確かにあんまり欲しいと思っていないですが……」

「了解。じゃあ、頑張るわ」

「え!?」

「内海の休日より楽しい時間を過ごさせてみせるって言えないし。というか、内海にとって自分の時間より楽しい時間はないだろうから。でも、俺といる時間も悪くないとは思って欲しい」

千田さんが自分の席から立ち上がって私に近づいてくる。

私は驚いて、つい一歩下がってしまった。




「内海って甘いの得意?」




「へ?」




自分でも腑抜けた声が出たことが分かった。

「甘い系が好き? それともクール系?」

「あ、あの……! 意味がよくわからないのですが」

「うーん、じゃあ推しているアイドルの名前は?」

私が答えられないのを無視して、千田さんが私のバッグについている推しのキーホルダーの名前を検索している。

「えーっと……幼い頃から習っていたダンスが長所。普段は何でもそつなくこなすタイプだが、ファンには甘いのが特徴のセンター」

何故か千田さんが私の推しの紹介を読んでいる。

しかも多分ファンの方が作った推し紹介の文章。