一途すぎる上司は、一人でも楽しそうな部下を甘やかしたい

「大好きだよ。本当に大好き。内海は覚えてないかもだけれど、前に内海がチョコを食べながらコーヒーを飲もうとした時に俺がぶつかって、内海にコーヒーがちょっとかかったんだよね」

千田さんのその言葉に、以前言われたことが頭をよぎる。



「いつもコーヒーを飲む時にチョコを食べているのも可愛い」



どうやらあの話には続きがあったらしい。

「幸いちょっと服に飛んだだけで火傷もなかったんだけれど、その時の内海の第一声は何だったと思う？　『大丈夫ですよ！』だったんだ」

千田さんはその時のことを思い出して楽しそうに笑っている。


「俺がクリーニング代とかちゃんと落ちるかとか考えているのに、内海は『気にしないで下さい！チョコだけでも美味しいので』って言ったんだよね。俺が上司で気を遣っているって分かっていた。でも一週間後にお詫びに小さな焼き菓子のセットを渡したら、本気で頭にハテナが浮かんでいて。俺が『コーヒーの……』って言ったらやっと思い出したみたいだった」

「こんな最高な子を逃したくないって思った。いつだって自分一人で楽しそうで、好きなことを沢山してるのに、当たり前みたいに相手も気遣えて。好きなことに一生懸命で、自分が気にならないことはすぐに忘れる。自分だけで人生を彩ってしまえて、自分だけで人生を楽しめる。内海はそんな人だって分かっている。でも、大好きだから」

「俺が隣にいたくて、俺の隣で笑っていてほしい。いや、隣じゃなくても一人で何でも楽しめる内海をずっと見ていたい。代わりに俺からも幸せを渡すから」


その言葉がどれだけ甘いかを千田さんは分かっているのだろうか。