前世での幼なじみ

〇 学校・昇降口(放課後) 柱
祐介が去ったあと、まりなはまだ呆然としていた。
あの瞬間、祐介の手が端帆の腕を掴んだ理由——
それは、ただの偶然なんかじゃない。 ト書き
(もしかして……)
彼は、無意識のうちに「気にしていた」?
でも、もしそうなら——どうしてそんな態度を取るの?
まりなの胸がざわつく。
しかし、すぐ隣で端帆はそんなことも気にせず、ニヤリと笑っていた。 ト書き
端帆「へぇ……祐介、やっぱりお前のこと好きなんじゃね?」 セリフ
まりな「っ!? そ、そんなわけ……」 セリフ
端帆「いやいや、さっきのは完全に嫉妬だろ」 セリフ
まりな「……」 セリフ
まりなは何も言い返せなかった。
——もしかしたら、祐介の心のどこかで私が特別な存在になっている?
考えれば考えるほど、胸がドキドキしてしまう。
(でも、祐介は認めようとしない……どうして?)
〇 帰り道(夕方) 柱
祐介はひとりで歩きながら、さっきの自分の行動を振り返っていた。
(俺……なんであんなこと……)
気づけば勝手に手が伸びて、端帆の腕を掴んでいた。
まるで、自分のものを奪われたみたいな、そんな感覚がして——。
祐介「……っ」 セリフ
無意識に拳を握る。
(俺は……アイツのこと……)
認めたくなかった。
でも、心の奥ではもう分かっている。
——まりなが、他の男と仲良くしてるのが、嫌だった。
〇 学校・廊下(昼休み) 柱
次の日。
まりなは、祐介の様子がどうしても気になっていた。
しかし、彼はいつも以上に距離を取ろうとしているように見えた。 ト書き
(やっぱり……あのこと、気にしてるのかな)
まりなは思い切って、放課後に祐介を呼び止めた。
まりな「祐介!」 セリフ
祐介「……なんだよ」 セリフ
まりな「昨日のこと……」 セリフ
祐介「昨日のことなんか、もう忘れろ」 セリフ
冷たく言い放たれる。
まりなの胸がチクリと痛んだ。
まりな「……じゃあ、なんであんなことしたの?」 セリフ
祐介「……」 セリフ
一瞬だけ目を伏せる祐介。
祐介「……ただの気まぐれだ」 セリフ
まりな「嘘」 セリフ
祐介「……」 セリフ
まりなはまっすぐに彼を見つめる。
まりな「本当は、私のこと……」 セリフ
祐介「やめろ」 セリフ
祐介の声が低くなる。
まりな「そんなこと、考えるだけ無駄だ」 セリフ
まりな「どうして?」 セリフ
祐介「……俺は、前世とか運命とか、そういうの信じねぇから」 セリフ
まりなの心臓が強く跳ねた。
やっぱり、祐介は「前世のこと」をどこかで気にしている——
だから、わざと突き放そうとしてる……?
〇 町・横断歩道(夕方) 柱
まりなは一人で考え込んでいた。
(私、どうしたいんだろ……)
祐介の気持ちが知りたい。
でも、彼はそれを認めようとしない。
前世の記憶が関係しているのかもしれないけど……
もし、それがなくても——
(私は、今の祐介を好きになりかけてる?)
自分の中に生まれた感情に、まりなは戸惑った。
まりな「……どうすればいいんだろ」 セリフ
そんなとき——
——キキィィィッ!!
目の前の道路で、車が急ブレーキをかけた。
まりな「えっ——」 セリフ
気づいたときには、視界がぶれる。
足を滑らせ、バランスを崩す——
その瞬間、強い腕がまりなを抱き寄せた。
祐介「——危ねぇ!!」 セリフ
まりなを守るように、祐介が倒れ込む。
まりな「……っ!」 セリフ
気づけば、彼の胸に顔を埋めていた。
心臓の鼓動が、すぐ近くにある。
まりなの頬が熱くなる。
(なんで……祐介がここに……?)
彼は息を荒げながら、まりなを抱きしめる腕の力を緩めなかった。
祐介「バカか、お前……!!」 セリフ
まりな「えっ……」 セリフ
祐介「なんで、いつも危なっかしいことばっかしてんだよ!!」 セリフ
祐介の声が震えていた。
まりなはその顔を見上げて、言葉を失う。
——彼の目には、明らかに「必死さ」が滲んでいた。
(やっぱり……祐介は私のこと……)
祐介はまりなを強く抱きしめたまま、離そうとしない。
祐介「お前がいなくなったら……俺は……」 セリフ
まりな「え……?」 セリフ
まりなの心臓が、高鳴る。
祐介の口から出かけた言葉の続きを聞こうとした、そのとき——
端帆「おい、まりな!!」 セリフ
遠くから、端帆の声が聞こえた。
まりなと祐介は、互いにハッとして見つめ合う。
まりなの頬が赤くなり、祐介は目をそらして勢いよくまりなから離れた。
祐介「……っ!」 セリフ
祐介「……俺は、もう行く」 セリフ
そう言い捨てるように言うと、祐介は背を向けて立ち去ってしまった。
まりなは、彼の背中を追うことができず、ただ見送るしかなかった。
(今……祐介は何を言おうとしたの?)
胸の奥に、確かな期待と不安が入り混じる。
——次話へ続く——