前世での幼なじみ

〇 まりなの部屋(夜) 柱
まりなは布団の中で、震える手を握りしめる。
さっき見た映像は、ただの夢とは思えないほど鮮明だった。
燃え盛る炎の中、血に染まった祐介——いや、前世の彼が、まりなの名前を呼んでいた。 ト書き
まりな(心の声)(あれが、前世で本当に起こったことなの?)
胸が締め付けられるような苦しさが込み上げる。
(もし、また同じことが起こったら——)
居ても立ってもいられず、まりなは布団を蹴飛ばして起き上がった。
次の日、彼女はすぐに祐介を探した。 ト書き
〇 学校・中庭(昼) 柱
まりなは廊下で祐介を見つけると、迷わず駆け寄る。
まりな「祐介!」 セリフ
祐介「……またかよ」 セリフ
祐介は苛立たしげに顔をしかめる。
祐介「頼むから、もう俺に——」 セリフ
まりな「お願い! 話を聞いて!」 セリフ
必死なまりなの表情に、祐介は戸惑ったように眉をひそめる。
まりな「……昨日、また夢を見たの」 セリフ
祐介「……」 セリフ
まりな「今度は、はっきりとした映像だった。燃えてる街で……あなたが、血だらけで倒れてて——」 セリフ
祐介「……っ」 セリフ
祐介の目が、一瞬だけ揺れる。
それを見逃さず、まりなは続けた。
まりな「あなたは私の名前を呼んでいたの。でも、私は何もできなかった……」 セリフ
祐介「……それがどうした」 セリフ
まりな「……もしかして、本当にあったことなんじゃないの?」 セリフ
まりなの言葉に、祐介は顔を歪める。
祐介「ふざけんな」 セリフ
まりな「……祐介?」 セリフ
祐介「そんなバカげた話、信じると思ってんのか?」 セリフ
祐介の声が低く、冷たくなる。
祐介「夢なんて、ただの記憶の整理だろ。お前、何か変なものに影響されすぎなんじゃねぇの?」 セリフ
まりな「でも……」 セリフ
祐介「いい加減にしろ」 セリフ
バッとまりなの手を振り払う。
祐介「前世がどうとか、俺には関係ねぇ」 セリフ
その言葉に、まりなは思わず息を呑む。
祐介「……もう俺に、関わるな」 セリフ
それだけ言うと、祐介は背を向けて歩き去る。
まりなは、その場に立ち尽くす。 ト書き
まりな(心の声)(……また、拒絶された)
心の奥が、ずきんと痛む。
(でも……祐介の目……)
確かに、ほんの一瞬だけ、揺らいでいた。
〇 学校・廊下(夕方) 柱
一方、祐介は自分の心を抑えきれずにいた。
(なんで、あいつ……)
苛立つように、髪をかき乱す。
まりなの言葉を聞いた瞬間、頭の奥がズキリと痛んだ。
(……俺は、何かを忘れてるのか?)
分からない。
ただ、あの夢の話を聞いたとき、胸の奥が異常なほどざわついた。
(もし、本当に前世なんてものがあるなら……)
(俺は、何を思い出すんだ?)
廊下に立ち尽くしながら、祐介は拳を握りしめた。 ト書き
〇 学校・昇降口(放課後) 柱
まりなは端帆と一緒に下校していた。
端帆「お前、マジで落ち込みすぎだろ」 セリフ
まりな「……だって、祐介にまた突き放されたし……」 セリフ
端帆「まぁ、アイツは不器用だからな」 セリフ
まりな「……でも……」 セリフ
まりなが言葉に詰まっていると——
端帆が軽く肩を抱き寄せる。
端帆「そんなことで落ち込むなって。お前には俺がいるだろ?」 セリフ
まりな「!?」 セリフ
まりなの顔が一気に真っ赤になる。
まりな「ちょ、ちょっと端帆!?」 セリフ
端帆「冗談だって。でも、マジで気にすんなよ」 セリフ
そんなやりとりを、遠くから見ていた祐介は、思わず拳を握りしめた。 ト書き
(なんで、俺は——)
端帆がまりなを抱き寄せるのを見た瞬間、体が勝手に動いた。
祐介「……っ」 セリフ
——ガシッ!!
祐介の手が、端帆の腕を強く掴む。
端帆が驚いて振り向く。
端帆「……お前、なにしてんの?」 セリフ
祐介の目は、怒りに燃えていた。
まりなは、思わず息を呑む。 ト書き
まりな(心の声)(なんで……祐介が、こんな顔を?)
端帆「もしかして……気にしてんの?」 セリフ
端帆が挑発するように笑う。
しかし——
祐介「……」 セリフ
祐介は何も言わず、そのまま手を離す。
無言のまま、彼はその場を去る。
残されたまりなは、呆然とその背中を見つめていた。 ト書き
まりな(心の声)(今の……なんだったの?)
胸が、強く高鳴っていた——。
——次話へ続く——