前世での幼なじみ

〇 学校・登校時(朝) 柱
まりなは目の下にクマを作りながら、重い足取りで学校へ向かっていた。
眠れなかったせいで、体がだるい。
(祐介、何か思い出しかけてる……そんな気がする)
確証はない。けれど、彼の態度の揺らぎ——
あの拒絶の仕方は、ただの迷惑とかではなく、何かを隠しているように思えた。
(もし祐介も、前世の記憶を持っているとしたら……?)
何か糸口があるはず。
でも、一人ではどうにもならない——。
修市「おはよーまりな!」 セリフ
まりな「うわっ……しゅ、修市!?」 セリフ
突然、肩を組まれてまりなはびっくりする。
そこにいたのは、藤松修市。
クラスのムードメーカーで、誰とでもすぐに仲良くなれる性格。
修市「お前、なんか悩んでる顔してんじゃん!」 セリフ
まりな「え、ええっ!?」 セリフ
修市「もしかして、恋か!? 祐介か!? うわ、絶対そうだろ!」 セリフ
まりな「ち、違っ……」 セリフ
そんなまりなの横から、冷静な声が割り込む。
麻紗子「藤松、朝からうるさい」 セリフ
修市「おっと、こりゃ失敬! でもなー、まりなが最近悩んでるの、俺は気づいてるんだぜ?」 セリフ
まりな「……」 セリフ
少し迷ったまりなだったが——ふと、考えを変える。
(……一人で悩んでも解決しない)
なら、仲間に協力してもらうしかない。
まりな「……ねえ、二人に相談したいことがあるの」 セリフ
〇 学校・昼休み(教室) 柱
まりなは修市と、もう一人の友人——中山田麻紗子に事情を話していた。
麻紗子は成績優秀で、落ち着いた性格の女子。
慎重な分、合理的な考え方をするタイプだ。
麻紗子「前世の記憶、ねぇ……」 セリフ
麻紗子は腕を組み、少し考え込む。
麻紗子「科学的に言えば、あり得ない話だけど……」 セリフ
修市「でも、まりなの言い方を聞く限り、本気みたいだな」 セリフ
修市はニヤニヤしながら言う。
修市「俺はロマンあると思うけどな! 前世で結ばれなかった恋人同士が、今世で再び出会う——みたいな!」 セリフ
まりな「ま、まりなと祐介が恋人だったかどうかは分かんないけど……」 セリフ
まりなが慌てて否定すると、修市は「はいはい」と適当に流す。
麻紗子「でも、祐介も何か隠してそうなのは確かだよね」 セリフ
麻紗子「だったら、祐介に直接聞くんじゃなくて、他の方法で探るべきじゃない?」 セリフ
まりな「他の方法?」 セリフ
麻紗子「たとえば……前世や記憶に関する本を調べるとか。そういう事例があるかもしれないし」 セリフ
まりな「なるほど!」 セリフ
麻紗子「あと、修市みたいなノリのいい人が、間接的に祐介に探りを入れるのもアリかもね」 セリフ
修市「おっ! 俺の出番か!」 セリフ
まりな「ちょ、ちょっと待って、あんまり変なこと言わないでよ!?」 セリフ
修市「大丈夫大丈夫、任せろ!」 セリフ
(すごい不安……)
でも、こうして誰かと協力できるのは心強い。
まりなは改めて二人を見て、心の中で感謝した。
まりな「ありがとう、修市、麻紗子……!」 セリフ
〇 学校・廊下(昼休み) 柱
その頃、祐介は廊下で一人考え込んでいた。
(……最近、まりなのことばかり考えてる気がする)
ただの幼なじみのはずなのに。
夢にまで見るなんて——。
(前世なんて、あるわけねぇだろ……)
けれど、まりなが言った言葉。
「前世でも、あなたは私を拒絶した」
その言葉が、頭から離れなかった。
祐介「……っ」 セリフ
意味の分からない苛立ちがこみ上げ、乱暴に髪をかき上げる。
修市「村井!」 セリフ
祐介「っ……!」 セリフ
不意に背後から声をかけられ、祐介は振り向く。
そこにいたのは——修市だった。
修市「お前さ、最近まりなのこと避けてね?」 セリフ
祐介「……は?」 セリフ
修市「いやいや、だって、前はもっと普通に話してたじゃん?」 セリフ
祐介「……そんなこと、関係ねぇだろ」 セリフ
修市「あるある、大いにある! まりな、めっちゃ悩んでるっぽいし」 セリフ
祐介「……」 セリフ
修市「お前、本当に何も思ってねぇの?」 セリフ
祐介「……」 セリフ
(俺は、何も思ってない……?)
自分にそう問いかけたとき、ふと胸がチクリと痛んだ。
(……思ってないわけ、ないだろ)
ただ、それを認めるのが怖かった。
〇 まりなの部屋(夜) 柱
まりなは机の上で、借りてきた本をめくっていた。
(前世の記憶……)
いくつか調べてみたけれど、確かな証拠になるようなものは何もない。
まりな「やっぱり、ただの夢……なのかな……」 セリフ
そう呟いた瞬間——
まりな「……っ!」 セリフ
また、頭の奥がズキンと痛んだ。
次の瞬間、まりなの目の前に——
知らないはずの光景が広がった。
荒れ果てた街。
燃え盛る炎。
そして——血に染まった、祐介の姿。
まりな「……っ!!?」 セリフ
まりなは息を呑んで、目を見開く。
(今の……なに……!?)
心臓が激しく脈打つ。
体が震えて止まらない。
でも、確かに見た——これは、ただの夢じゃない。
(もしかして、前世で……祐介は……)
まりな「……私のせいで、死んだ……?」 セリフ
そう思った瞬間、まりなの全身が凍りついた。
——次話へ続く——