前世での幼なじみ

〇 学校・校門前(夕方) 柱
夕焼けに染まる空の下、まりなと祐介が向かい合う。
祐介の目が驚きに見開かれたかと思うと、すぐに警戒の色を帯びる。 ト書き
祐介「……今、なんて言った?」 セリフ
まりなは自分の口から出た言葉を反芻し、背筋がゾクリとする。
(……私、どうして……?)
口にした瞬間、それが単なる夢のセリフではなく、確かな記憶のように感じられた。
でも、そんなはずはない。 ト書き
まりな「え、えっと……今のは……」 セリフ
言い訳しようにも、どう誤魔化せばいいのか分からない。
祐介は眉をひそめ、じっとまりなを見つめる。 ト書き
祐介「お前さ、何が言いたいんだ?」 セリフ
まりな「……私にも分かんない。でも……祐介のこと、なんか前から知ってたような気がするの」 セリフ
まりなが必死に言葉を絞り出すと、祐介の表情がますます険しくなる。
祐介「……悪いけど、意味が分かんねぇ」 セリフ
そう言い捨てると、祐介は踵を返して歩き去る。
まりなはその背中を見送るしかなかった。 ト書き
まりな(心の声)(やっぱり、信じてもらえないよね……)
夢と現実の境目が曖昧になっていく感覚に、まりなは戸惑いを隠せなかった。 ト書き
〇 祐介の部屋・夜 柱
暗い部屋の中、ベッドに寝転がる祐介。
天井を見上げながら、まりなの言葉を思い返していた。 ト書き
(俺が……約束した?)
そんなこと、言った覚えはない。
だが——妙にリアルに感じる。
あの言葉を聞いた瞬間、何かが脳裏に引っかかった。
まるで、忘れていた記憶のカケラがこじ開けられるような、嫌な感覚。 ト書き
祐介(心の声)(……くだらねぇ)
祐介はため息をつき、乱暴に布団をかぶる。
アイツが何を言おうと関係ない。
俺は、過去にこだわるつもりはねぇ——。
そう自分に言い聞かせながら、静かに目を閉じた。 ト書き
〇 学校・教室(放課後) 柱
まりなは一人、窓の外をぼんやりと眺める。
夕陽がガラスに反射し、教室に暖かい光を落としていた。 ト書き
まりな(心の声)「やっぱり、信じてくれないよね……」
ふと、ぽつりと呟いたその言葉を、誰かが聞いていた。
端帆「お前さ、何一人でしんみりしてんの?」 セリフ
まりな「えっ……」 セリフ
隣の席に座っていたのは、石垣端帆。
明るくノリが軽い、クラスのムードメーカー的存在。
まりなをからかうような笑みを浮かべている。 ト書き
端帆「前世の記憶? なんかロマンチックでいいじゃん」 セリフ
まりな「え、ええっ!? 聞いてたの!?」 セリフ
端帆「まぁな。でも、俺はそういうの嫌いじゃないぜ?」 セリフ
端帆はニヤリと笑い、まりなを肘でつつく。
端帆「それって運命の恋ってやつじゃね?」 セリフ
まりなの胸がドクンと跳ねる。
まりな(心の声)(前世の幼なじみ……運命……?)
自分はただ記憶を確かめたいだけのつもりだった。
でも——もしそれが本当に「運命」だとしたら……?
まりなの中で、疑念と確信が入り混じっていく。 ト書き
〇 駅・階段(夜) 柱
まりなは帰り道、駅の階段を降りようとして——足を滑らせた。
まりな「きゃっ——」 セリフ
その瞬間——
ガシッ!
祐介「危ねぇ!」 セリフ
強く引き寄せられたまりなの体。
気づけば、祐介の腕の中にいた。
まりなは驚きに息を呑む。 ト書き
まりな(心の声)(祐介……?)
祐介の鼓動が近い。
腕はしっかりとまりなを支えながら、微かに震えていた。 ト書き
まりな(心の声)(なんで……?)
見上げると、祐介は苦い表情で眉をひそめ、目を逸らした。
祐介「……気をつけろよ、バカ」 セリフ
その言葉にこめられた微かな優しさ。
まりなの胸が、抑えきれないほど高鳴る。 ト書き
(今の……何?)
祐介の腕のぬくもりを感じながら、まりなは思わず息をのんだ。
二人の距離が、今までより少しだけ近づいた気がした——。 ト書き
——次話へ続く——