前世での幼なじみ

〇 学校・昇降口(放課後) 柱
祐介「……考えさせてくれ」
そう言って、祐介は去ってしまった。
まりなは、その背中を追いかけられず、ただ立ち尽くしていた。 ト書き
(祐介は……思い出すのが怖いんだ)
前世で、彼はまりなを守るために戦い、そして命を落とした。
そして今世でも、無意識のうちに同じ道を辿ろうとしている。
(でも……そんなの嫌だ)
今世では、そんな悲しい結末にしたくない——
まりな「私が……運命を変える」 セリフ
まりなは、強く決意した。
〇 学校・屋上(夕方) 柱
一方、祐介は一人で歩きながら、深く考え込んでいた。
(……俺は、本当に何も覚えていないのか?)
まりなの言葉を聞いて以来、脳裏に浮かぶのは断片的な記憶。
炎の中で、まりなの名前を呼ぶ自分。
血まみれで倒れながら、彼女を守ろうとする自分。
(……こんなの、ただの夢のはずなのに)
だけど、それを夢だと片付けられないほど、リアルな感覚が残っていた。
祐介「……もし、本当に前世があるなら」 セリフ
俺は——また、まりなを守れなかったらどうする?
そんな不安が、胸を締め付ける。
〇 学校・図書室(昼休み) 柱
翌日、まりなは修市と麻紗子に相談していた。
まりな「祐介に、前世のことを思い出させるべきかな……?」 セリフ
修市は腕を組んで考え込む。
修市「うーん、思い出したら、またお前を守ろうとするかもしれねぇよな」 セリフ
まりな「でも……それでまた、彼が苦しむのは嫌なの」 セリフ
まりなの声は、少し震えていた。
麻紗子が、冷静な表情で口を開く。
麻紗子「祐介は、過去を受け入れるのが怖いんだと思う。でも、それを乗り越えないと、本当の意味で未来には進めない」 セリフ
まりな「……未来……」 セリフ
麻紗子「結局、まりなはどうしたいの?」 セリフ
麻紗子の問いに、まりなはギュッと拳を握った。
まりな「私は……祐介と一緒に、運命を変えたい」 セリフ
修市「……なら、もう答えは決まってるね」 セリフ
修市は軽く笑いながら、まりなの肩を軽く叩いた。
まりなは深く息を吸い込んだ。
〇 学校・校舎裏(放課後) 柱
まりなは校舎の裏で、祐介を待っていた。
彼に、ちゃんと伝えようと思ったから——
そして、しばらくして現れた祐介に向かって、まりなはまっすぐ言った。
まりな「祐介、私……運命を変えたい」 セリフ
祐介「……は?」 セリフ
まりな「前世であなたは私を守ってくれた。でも、それで終わりじゃない」 セリフ
祐介「……」 セリフ
まりな「だから、今度は——二人で乗り越えよう」 セリフ
まりなの言葉に、祐介の目が揺れる。
祐介「……そんなの、簡単に言うなよ」 セリフ
まりな「簡単じゃない。でも、あなたとならできる」 セリフ
祐介「……」 セリフ
祐介は、まりなの真剣な瞳を見つめたまま、しばらく沈黙した。
そして、少しだけ息を吐き、力を抜く。
祐介「……そうだな」 セリフ
その言葉が、まりなの心に温かく響いた。
少しずつ——彼の心が、開かれ始めている。
(前世じゃなく、今の私たちとして——)
まりなは、そう強く願った。
——次話へ続く——