前世での幼なじみ

〇 学校・屋上(昼休み) 柱
祐介「俺は、今度こそ……お前を守る」
祐介の言葉が、まりなの心に深く刻まれていた。
「今度こそ」——
その言葉が、まりなには引っかかる。
(まるで……前にも同じことがあったみたい)
それって、やっぱり——
(前世の記憶と、繋がってる……?)
祐介は自分の記憶を否定しているけれど、無意識のうちに何かを感じ取っているのかもしれない。
まりなは、彼の背中を見つめながら、胸の奥がざわつくのを感じた。
〇 まりなの部屋(夜) 柱
その夜。
まりなは夢を見た。
それは、これまでの断片的な夢よりも、はるかに鮮明な記憶だった。
——戦乱の時代。
——燃え盛る城。
そこに立っていたのは、前世の自分。
前世の祐介(今とは違う名を持つ少年)が、剣を持ち、まりなを庇っていた。
前世のまりな「……私を、助けないで」 セリフ
前世の祐介「バカ言うな」 セリフ
血まみれの祐介が、苦しそうに笑った。
前世の祐介「俺は……お前を守るって決めたんだよ」 セリフ
前世のまりな「でも、このままじゃ……!」 セリフ
前世の祐介「……もし、またどこかで会えたら」 セリフ
前世の祐介「——また、お前を守る」 セリフ
——その言葉の直後、祐介は倒れ込んだ。
まりな「——っ!!」 セリフ
まりなは叫んで、手を伸ばした—— ト書き
〇 まりなの部屋(深夜) 柱
まりな「……っ!!」 セリフ
目を覚ますと、まりなは汗だくになっていた。
まりな「今の……」 セリフ
あまりにもリアルすぎる記憶。
確信した。
(前世で、祐介は私を守って……そして、死んだ)
そして、彼は最後に言っていた。
前世の祐介「また、どこかで会えたら……お前を守る」
(……だから、祐介は私を助けてくれるの?)
その想いが、まりなの胸を締め付ける。
(でも……祐介はまだ何も覚えてない)
(もし、彼が前世の記憶を完全に思い出したら……どうなるんだろう)
〇 学校・昇降口(放課後) 柱
次の日、まりなは祐介と向き合うことを決めた。
彼の気持ちを確かめるために——。
まりな「祐介、話があるの」 セリフ
祐介「……なんだよ」 セリフ
まりな「あなた……本当は何か覚えてるんじゃない?」 セリフ
祐介「……」 セリフ
祐介の表情がわずかに揺れる。
まりな「前世のこと……本当は、感じてるんでしょ?」 セリフ
祐介「……そんなわけねぇだろ」 セリフ
まりな「じゃあ、なんで昨日私を助けてくれたの?」 セリフ
祐介「それは……」 セリフ
まりな「あなたは私を守るって言った。『今度こそ』って」 セリフ
祐介「……っ!」 セリフ
まりなの言葉に、祐介は目を見開く。
(やっぱり……無意識に口にしたんだ)
まりなは、そっと彼の手を握る。
まりな「私は、前世であなたが私を守ってくれたことを思い出した」 セリフ
祐介「……」 セリフ
まりな「だから、今度は——私があなたを助ける番だよ」 セリフ
祐介はその言葉を聞き、苦しそうに目を伏せる。
祐介「……俺は……」 セリフ
彼の中で、何かが崩れかけている。
(あと少しで……思い出しそう)
まりなは、彼を見つめながら確信する。
しかし——そのとき、祐介が震える声で言った。
祐介「……思い出したくねぇんだよ」 セリフ
まりな「え……?」 セリフ
祐介の瞳には、恐れが浮かんでいた。
祐介「もし……本当に前世があったとしても」 セリフ
祐介「……俺は、またお前を守れないかもしれねぇ」 セリフ
まりな「……っ!」 セリフ
まりなの胸が締め付けられる。
(そんな……)
前世では祐介は自分を守ろうとして、命を落とした。
そして、今世でまた同じ運命を辿るのではないかと——
彼はそれを怖がっている。
祐介「だから、俺は……お前を守るなんて、もう言えねぇんだよ」 セリフ
祐介の声が震えているのが分かる。
まりなは、そんな彼の手をぎゅっと握りしめた。
まりな「それでも……私は、あなたのそばにいたい」 セリフ
祐介「……!」 セリフ
祐介の目が揺れる。
(祐介は、ずっと一人で背負っていたんだ)
(だったら、今度は——)
まりな「前世のことなんか関係ない。私は、今のあなたを信じたい」 セリフ
まりなは真っ直ぐに祐介を見つめた。
しかし、祐介は答えられないまま、まりなの手をそっと振り払う。
祐介「……考えさせてくれ」 セリフ
そう言って、祐介は背を向けて去ってしまった。
まりなは、その背中を追いかけることができなかった。
(……祐介……)
——彼が、前世の記憶をすべて思い出す日は近いのかもしれない。
しかし、それが二人にとってどんな未来をもたらすのか——
まりなには、まだ分からなかった。
——次話へ続く——