四季の守護者たちはとびきりに溺愛したがり。

 ここで話すのは流石に目立ちすぎるなぁ……どこか人目につかないところに移動したいけど、廊下には伊春君目当てのギャラリーがわんさかいる。

 そんな感じで私がチラチラ廊下を見てたからか、伊春君も廊下に視線を移して怪訝な表情を浮かべた。

「……主様、廊下にはこうも人が密集するのが普通なのですか?」

「いや……こういう事は滅多にないはずなんだけどね……。」

 伊春君のせいだよ!とツッコみたくなったけど、彼は自分が見られているという自覚がないっぽい。

 あれだけ桜賀君と呼ばれていたら嫌でも気付きそうだけど、伊春君は軽く首を傾げている。

 その姿も絵になっていて、廊下で伊春君を見ていた女の子たちの騒ぐ声が飛んできた。

 うぅっ、この場から逃げてしまいたい……。

 バッグの持ち手を強く握りしめながらそう思うも、逃げようものなら伊春君が「主様!」と呼ぶ未来がはっきり見える。

 とにかく呼び方をどうにかしてもらわないといけないから、あのギャラリーの中を突っ切って行くしかない。

 でも、私にそんな事できる勇気ないよっ……!