さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



Mr.Dがまだ英語で何かを捲し立てているけど、聞く気力もなかった。

ぼんやりと夢の中にいるみたいな心地で、次のポジションへと移動する。ぼやけた景色。焦点を合わせる努力もせず、ゆっくりと足を踏み出した──その時。


くら、と目の前の景色がブレた。


気づいた時には、視界が不自然に傾いていて、背筋に冷たいものが走る。

踏ん張ろうにも、全身に力を入れられなくて。


あ、やば。

倒れる──


そう覚悟した、次の瞬間。

グイッ!と力強い腕に引かれた。


ふわ、と鼻腔をくすぐる匂い。


弾かれたように顔を上げると──

そこに立っていたのは、遥風で。


目が合った瞬間、どくん、と心臓が嫌に高鳴った。



息がかかる距離感、肌に触れる体温。



その瞬間、昨日の夜の出来事が脳内にフラッシュバックし──



パシッ!!!



乾いた音が、レッスン室に響いた。