さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



「っ……!」


腕ごと身体を押さえ込まれて、身動きひとつ取れなくなる。

遥風の胸板に顔が押し付けられて、ドクドクと速い心臓の音がダイレクトに聞こえた。

荒い息が近くて、反射的に身体がこわばる。

けれど遥風は気にした様子なんかなくって、さらにぎゅう、ときつく締め付けてきた。



「……離して、」

「嫌」



掠れた声が、耳元に落ちる。

低く押し殺した、微かに震えたような声。少しでも触ったら壊れてしまいそうなその様子に、私はそれ以上何も言えなくなる。



「……ずっと、我慢してた。ずっと、触りたかった」



ぎゅう、と腕に力がこもって。



「ずっとこうやって──

キスしたかった」



息が、苦しい。


けれどこちらの様子なんて気にする余裕もないみたいに、遥風は私を離そうとしなくて。

後頭部に回された手が、逃がさないとでも言うみたいにぐしゃりと髪を掴んだ。



「……でも、我慢してた。お前を困らせたくないから。これ以上、お前に重いものを背負わせたくなかったから」