さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



──ドサッ!!


視界が大きく揺れ、気づいた時にはベッドの上に投げ出されていた。

逃げようと身を起こす間もなく、遥風の肘が顔の横につく。ぎし、とマットレスが沈み込んで、覆い被さってきた影が視界を暗くした。


「待っ、遥風──」


ちゅ、と唇を塞がれる。


「んっ……!」


そしてまた、すぐに離れて。

至近距離で見つめてくる遥風と視線が合った。


黒曜石みたいに綺麗な瞳が、不安定に揺らいでいる。

その奥に瞬く色は、怒っているようにも、今にも泣き出しそうにも見えて、私は押しのけようとした手に力を入れられなかった。


「はる──」


もう一度、重なった。

ちゅ、と短く触れて、また離れる。口を開こうとしたら、また制するように塞がれる。


「ん、……っ……」


ちゅ、ちゅっ。

息を継ぐ間もないまま、短いキスを何度も何度も繰り返されて、じわ、と視界が滲んだ。


このままじゃダメだ。脳内でけたたましく警鐘が鳴って、私はさすがに遥風の肩を押し返そうとする。

けれど次の瞬間、遥風はそれを許さないみたいに、ぎゅう、と強く抱き込んできた。