「……ちょうど見えんだよ、俺の部屋から」
その言葉に、私は俯いたまま目を見開いた。
……ちょうど見える?
でも、あそこは植え込みに隠された人目につきにくい場所だった。
寮の入り口からだいぶ離れていて、ほとんどの部屋の窓からは死角になるような場所。
なのに、そんな場所がよりにもよって──
遥風の部屋からは、ちょうど見えるって?
胸の奥に、ひどく冷たいものが落ちたような感覚。
偶然にしては、出来すぎていた。
まるで、最初から、見せつけようと計画していたみたいな──
「……っ」
ハッとして、口元を手で覆った。
そういえば、翔と遥風は同じ部屋だ。
だとしたら、自分たちの部屋からどの辺りまで見えるのか、どこまでなら声が聞こえるのか、翔は大体把握できているはず。
ってことは翔は、私をわざわざあの場所に連れて行って、キスしたんじゃないか──
遥風に、見せつけるために。
私が必死に維持しようとしてきた均衡が、一体どれだけ脆いものなのかを、突きつけるために。
