さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



……と、一度招き入れたはいいものの。

わざわざこんな深夜に部屋を訪ねてきた遥風が、何も言ってこない。

黙って篤彦側のベッドに腰掛けたまま、スマホをいじり続けている。


何か用事があるから来たんじゃなかったの……?

怪訝に思いながらも、私は妙な沈黙をどうにかするために遥風に声をかけた。


「何か飲む?遥風」


明るめの声を作りつつ、部屋の端にある小さめの冷蔵庫の前にしゃがみ込む。


「昨日買い出し行ったから、色々あるよ。ジュースとか、炭酸とか」


と、そんなことを言いながら扉を開けて中身を物色していた──

そのときだった。


「お前さ」


遥風の冷たい声が、割り込む。


「そういう格好、やめろって言ったよな」


ぴた、と動きを止めた。


……完全に、忘れていた。

今の私は、細い肩紐のキャミソールに、丈の短いショートパンツ。

篤彦がいないのをいいことに、寝るためだけの格好でくつろいでしまっていたのだ。


遥風の隠そうともしない不機嫌なトーンに、冷や汗が滲む。マズい雰囲気になってしまったかも。

けれど私はなんとかそれを誤魔化そうと笑って、バタンと冷蔵庫のドアを閉めた。


「ごめん。今日ね、篤彦いなかったから……」


と、そんなことを言いながら、立ち上がろうとした──

その時だった。