さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



「どうしたの、遥風」

「いや、……」


曖昧に返したきり、黙り込む遥風。

そのどこか心ここにあらずな様子に、私は少し首を傾げる。顔を覗き込むと、その瞳にはうっすら疲れたような陰りが滲んでいた。


寝れてないのかな……?


遥風は数秒遅れて、ようやくこちらに焦点を合わせる。


「入っていい?」

「あ……」


ちょっとだけ躊躇った。

だって、遥風を部屋に上げるのは距離感上色々とマズい気がして、今まで避け続けてきたから。

けれど、どっちにしろ遥風とは直接話さなきゃいけないこともあったし、私自身も今一人でいるのはなかなかしんどいから、話し相手が欲しかった。


──久しぶりに遥風と話せば、ちょっとは安心できるかもしれない。


「……いいよ」


身体を横にずらして、遥風を室内に通す。

ガチャン、と扉が閉まる音が、静寂の中で大きく響いた。