「……あーもう、」
考えれば考えるほど分からなくなってきて、苛立ちを逃すみたいに枕をぎゅうっと抱きしめた、そのときだった。
コンコン。
「っ!」
不意に響いたノック音に、肩がびくっと跳ね上がった。
こ、こんな時間に誰……まさか天鷲翔?もしかして、さっきの話の続きをしにきたとか?
急激に緊張してしまって、ばくばくと高鳴る鼓動。ここに私がいるのがバレないように、反射的に動きを止めて呼吸を潜めてしまう。
けれど、身構える私に、ドア越しからかかった声は──
「俺」
遥風のものだった。
「……!」
張り詰めていた全身の筋肉が、一気に弛緩する。
なんだ、遥風か……、びっくりした……。
胸の奥に、じんわりとした安心感が染み渡る。私は止めていた息を深く吐くと、すぐにドアの方に歩み寄った。
そっ、と細くドアを開けると、そこには部屋着姿の遥風。寝る前だったのだろうか、いつもより無造作な柔らかい前髪が目元に落ちている。
近づくと、清潔感のある柔軟剤と、柑橘系の爽やかさが混じったいつもの遥風の匂いが、ふわ、と鼻先を掠めて──
それだけで、さっきまで翔のことでぐるぐると回り続けていた頭が落ち着くみたいな気がした。
