さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



「俺なりに考えて、ちゃんと覚悟してやってることなんです」


震えそうになる声を強く張って、顔を上げた。

涙を堪えて、真正面から翔を睨む。


「何も許そうとしないくせに──

ただ傷つけたいだけのくせに、わざわざ話しかけてこないで!」


翔が、一瞬目を見開いた。


言ってしまってから、ハッとする。



…………私、何して。



慌てて、パッと目を逸らす。


翔もすぐに言い返してくることはなくて──

結果、痛いほどの沈黙が降りた。



耳の奥で響く鼓動。呼吸音。

さぁ、と生ぬるい風が二人の間を抜けて、街灯の下、翔の細い前髪がさらりと揺れた。


永遠に続くかのような静寂の中、私を射抜く視線。


やがて、その瞳が──すう、と冷たく細まる。


「……じゃあ」


感情の読めない声が、鼓膜を揺らした。



「俺がその覚悟、台無しにするって言ったら?」



その意味を理解するより先に、翔がこちらへ踏み込んだ。


視界が、暗くなる。



「っ──」



一歩後ずさろうとした瞬間、背中に手を添えられて。




身構える暇もなく──



唇を、重ねられた。