さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



永遠にも思える、重たい沈黙。


その数秒後──

翔が、ゆっくりとこちらに視線を向けた。


「……お前に話す必要ある?」


凍てつくような冷たい瞳。ヒュッ、と息を呑む。


っ、失敗した……!!


今日はもう面倒ごとに巻き込まれたくないから、これを聞くのは後にしようって思ってたのに……なんで聞いちゃったんだろう。疲れてなかったら、絶対聞いてなかったのに。

ほんの少し前まで、少し柔らかい色を浮かべていたはずの彼の瞳。そこからは完全に温度が抜け落ちていて、まるで別人みたいだった。

怯むけれど、一度落としてしまった言葉を無かったことにはできなくて、私は目を逸らしたまま白々しく付け加えた。


「その……一人で何か抱え込んでるんだったら、吐き出した方が楽になるんじゃないかな、とか、」

「……」


その言葉に、僅かに目を見開く翔。

けれど、次の瞬間──


「……は」


彼の口元に浮かんだのは、嘲るような冷たい笑みだった。

どこか呆れたような、それとも、何かに失望したみたいな。


ふっ、と心臓が落ちるみたいな感覚。


「……お前さぁ」


翔は私をまっすぐに見据えたまま、静かに吐き捨てる。


「自分のこと、なんだと思ってるの?」


ドクン。

その言葉に、心臓の奥深く、柔らかい部分を突き刺されたみたいで。


……やばい。

何か答えなきゃ、と思っても、言葉はカラカラの喉に張り付いて出てこない。


結局黙り込んで俯く私を冷たく見下ろしたまま、翔は続ける。