厳しく突き放してきたかと思えば、急にこうやって優しくなる。
かと思ったら、次の瞬間には、こちらのメンタルをズタズタにしてくるような正論を投げかけてくる。
どれが本当の翔なのかは、いまだによく分からない。
ただ、分からないけど、なんとなく──
本当は優しくしたい人が、そうしてはいけないのだと自分に言い聞かせているみたいな。
そんな印象を、最近抱いてしまうのだ。
……都合の良い解釈かもしれないけど。
でも、もし仮にそうだとしたら、それは一体どうしてなんだろう。
天鷲翔って人は本当はどういう人間で、何を考えて、何を怖がって、何を背負ってるんだろう。
それが今になって、何故か抑えようがないほど知りたくなってしまった。
──疲れていたんだと思う。
蓄積した疲労が、普段の思考回路を完全に鈍らせていることに気づいていた。
気づいていた、はずだったのに。
「……翔くんは、LUCAに戻る気はあるんですか」
言葉を、止められなかった。
言ってしまってから、あ、と動きを止める。
さっきまで僅かに和らいでいた空気が一瞬にして霧散し、ピシリ、と冷たく張り詰めた。
吹き抜ける風。ざわ、とさざめく植え込みの葉。
恐る恐る、視線を向けると──
街灯の光に照らされた翔の横顔が、時間が止まったみたいに固まっていた。
